第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第14話 一航戦の試練
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いた。
「……オホン。ともあれ、これで若手の不信は拭えたようですし。私達が一芝居打つ必要は、もうなさそうですね。赤城さん」
「ええ。これで他の艦娘達も、彼を仲間として受け入れてくれるでしょう。……私達が受け入れる姿勢でも、若い子達が不安なままでは艦隊の統率も乱れてしまいますし」
「全く……巨大飛蝗の一件が片付いたら、人を見る目というものを養わせる必要がありますね」
――最初からサダトを信用していた二人は、若手が彼に不安を抱いている現状を打破するために、この「試練」を画策していた。彼の「覚悟」と「力」を目に見える形として、鎮守府全体に知らしめるために。
その目論見通り、彼は試練に耐え抜き艦娘達の信頼を勝ち取って見せた。
戦士にとって「力」とは、決して無視できない要素だ。むしろ、「全て」に近い。一航戦の猛攻を耐え抜いた彼なら、信用していなかった他の艦娘達も受け入れられるだろう。作戦、成功だ。
「……そして。この『試練』を通して、一つわかったことがあります」
「……ええ」
踵を返し、波止場から立ち去って行く二人。神妙な面持ちを浮かべる彼女達は、剣呑な雰囲気を纏いながら互いに視線を交わした。
そして、同時に振り返り――桟橋に着いた途端にぶっ倒れ、周りを大騒ぎさせているサダトを遠目に見つめる。
「……私達の全力攻撃でも倒せない改造人間すら、容易く一蹴する。巨大飛蝗は、それほどの強敵なのだ――と」
この試練を通して判明した、巨大飛蝗との戦力差。その大きさを感じ取った二人は、厳しい表情のまま波止場から完全に姿を消したのだった。
◆
「……赤城と加賀のおかげで、若い艦娘達の信頼も集まりつつあるな。……だが、問題は……」
執務室の窓から、騒然となっている訓練場周辺を見下ろす長門。――その手には、何十枚にも重ねられた書類が握られていた。
その表紙には、「資料解析結果」と記されている。
「……南雲殿。これほど度し難い話は、流石に私も初めてだよ」
書類の内容を知る彼女は鎮痛な面持ちで、艦娘達にもみくちゃにされている青年を見つめていた。
追い求めていた情報が手に入ったというのに。その表情はどこか、儚い。
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