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仮面ライダーAP
第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第13話 変身
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るって言ってるのよ! 並大抵の実力じゃ、一分も持たずに海の藻屑にされちゃう!」
「比叡ちゃん……」

 徐々に涙ぐんで行く比叡に、夕張は掛ける言葉を見失う。彼女の中に渦巻く、複雑な感情が表情に現れていたのだ。

 信じていい人間かも知れない。むしろ、現状と人柄から判断するならその可能性の方が高い。だが、自分は安心し切れず不安を抱いてしまった。
 それが形となってしまったかのような今の状を目の当たりにして、焦燥に駆られているのだ。自分の懸念が、この事態を招いたのだと錯覚して。

 ――それを知ってか知らずか。彼女の手に掌を重ね、宥めるように見つめるサダトの表情は穏やかな色を湛えていた。

「……大丈夫。きっと、なんとかして見せる」
「わ、わかってない! わかってないよ! 一航戦の実力は半端じゃないのよ!? あなたも腕に覚えがあるのかも知れないけど、彼女達は強いなんて次元じゃ……!」
「そうだろうな。きっと、そうだろう」

 比叡の手を優しく握り、サダトは肩から手を離させる。そして、彼女達が待っているであろう方角へ、剣呑な眼差しを向けた。
 その凛々しい横顔に、比叡は無意識のうちに見入ってしまう。

「だけど、引き下がることだけは絶対にできない。彼女達は『力』以上に、俺の『覚悟』を見ようとしている」
「えっ……!?」
「ここで背を向けるようであれば、所詮その程度の『覚悟』。試練に敗れるようであれば、所詮その程度の『力』。彼女達はその二つに段階を分けて、俺の本質を推し量るつもりなんだ」
「……!」
「例え敗れたとしても、試練に挑めば『覚悟』のほどは汲んで貰えるだろう。直接あいつと戦う『戦力』に数えてはくれなくなるだろうけど、それでも協力はさせてくれるはず」

 やがて、サダトの手に握られたワインボトルが夏の日差しを浴び、照り返すように輝く。すでに腰周りには、それを収めるベルトが現れていた。

「――だが。それは本来なら無関係であるはずの艦娘の皆が、巨大飛蝗との戦いで矢面に立たされることを意味する。逃げ出すことも敗れることも、俺には絶対に許されない」
「南雲君……」
「でも、心配はいらない。俺だって、負けるつもりで挑むつもりは毛頭ないから。必ず勝って、一人でも多くの艦娘から信頼を得て見せる」
「……!」

 自分が疑っている間も、彼は信頼を勝ち得るために無謀な戦いに挑もうとしている。その気まずさから、咄嗟に比叡はサダトから目をそらしてしまう。
 そんな彼女を一瞥し、サダトはベルトにワインボトルを装填した。

『SHERRY!? COCKTAIL! LIQUEUR! A! P! SHERRY!? COCKTAIL! LIQUEUR! A! P!』
「だから、この一回でいい。見ていてくれ、俺の――変身!
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