第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第12話 信頼の条件
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ダトに感じているのだろう。
理屈の上では、わかっている。
巨大飛蝗に抗する鍵を握っているサダトを拒む理由など、あるはずがない。あの怪物を確実に排除するには、より多くの情報を持つ彼を味方に付ける必要がある。
それに改造人間である彼が先陣を切って戦うのであれば、艦娘の損害を最小限に抑えることもできる。
だが、感情がそれを拒むのだ。ぽっと出の、軍人ですらない男に、最愛の姉が笑顔を咲かせて明るく接していること。そんな男を、尊敬する先輩達が軒並み受け入れていること。
許せない。だが、それ以上に。多くのものを失いながら、それでも巨大飛蝗を倒すために来訪してきた彼を、そんな浅ましい理由で拒んでしまう自分が、何よりも許せなかった。
「……待って頂戴」
「――ッ!?」
その時。
若手達が先人達の意向を雰囲気で汲み取り、不信感を抱いたまま彼を受け入れようとしていた、その時だった。
凛とした一声が一帯に響き渡り、どよめく聴衆と金剛達を黙らせる。その声の主は、聴衆の最後部から静かに口を開いていた。
ポニーテールを揺らし、凛々しい眼差しでサダトを射抜く、その美女の名は――この鎮守府の主力である第一航空戦隊の筆頭格の一人、正規空母「加賀」。その傍らには、同じく一航戦の筆頭格である正規空母「赤城」が並んでいる。
青いミニスカートを夏の風に揺らし、加賀は一歩踏み出す。その瞬間、彼女達に畏敬の念を抱く若手の艦娘達が、蜘蛛の子を散らすように道を開けた。
『おーっと、ここで我が鎮守府のエース加賀さんのマイクパフォーマンスかーっ!?』
その鋭い視線から漂う殺気など気にする気配もなく、那珂は場違いなほどに明るく振る舞いながら、加賀の側まで駆け寄って行く。
そして彼女の近くまで辿り着いた途端。加賀は問答無用で彼女のマイクをひったくり、サダトに厳格な視線を注ぐ。そのただならぬ気迫を真っ向から浴び、サダトの表情も引き締まった。
『……南雲サダト。あなたの意向は理解したわ。あなたの力を借りなければ、あの巨大飛蝗を倒すことはできない、ということも』
『……それなら!』
『けれど。命懸けで戦場に立つ艦娘が、己の命運を懸けるのは信じられる仲間だけ。今日私達と会ったばかりのあなたには、それが致命的に欠けている』
『……』
それはまるで、若手達の胸中を代弁しているようだった。
ベテラン陣のほとんどがサダトを受け入れる雰囲気である中、そのベテラン陣の中心である彼女が若手寄りの意見になることは想定外であり、遠巻きに見つめていた比叡は目を剥いている。
だが不思議と、周りのベテラン陣は加賀の発言に驚く気配はなかった。まるで、こうなることが分かり切っているかのようだ。
『かといって、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ