第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第9話 異世界への扉
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直視していなかったソレは、現実の事象であると思い知らせるかのように、彼の視界に広がっていた。
空間に。夜空に。
亀裂が走っていたのだ。
「あれ、は……」
ひび割れた夜空の隙間からは、どんな闇にも勝るほどの――見ているだけで吸い込まれそうなほどの、圧倒的な深淵が覗いている。
明らかに自然の現象ではない。だが、幻にしてはいやにハッキリと亀裂が見えている。むしろ、今自分が見ている夜空こそが偽物ではないかと、感覚が麻痺してしまいかねないほどに。
だが。夜空も亀裂も、間違いなくこの世界に存在している。幻などでは、ない。
(な、んなんだ、あれは……まさか!?)
少なくとも、気を失う直前まであんなものは視界に入らなかった。
空の亀裂は、巨大怪人がいた場所に非常に近く、あの時から在ったなら接近する前に気づいていたはず。
――そう。あの空の亀裂は、巨大怪人が姿を消した後に見つけたのだ。
ならば。あの蒼い閃光の影響で発生したものであると、容易に想像がつく。
(……あの、穴……)
サダトは鋭い眼差しで、空の亀裂を観察する。広々と亀裂の線が伸びているが、そのほとんどは小さな穴しか開いていない。
だが中央部に大きく開けられた穴だけは、ひときわ大きな風穴が出来ていた。
――あの巨大怪人くらいの大きさなら、入り込めてしまう程度には、巨大な風穴が。
(……)
空に走る広大な亀裂。姿を消した巨大怪人。亀裂の中にある、大きな穴。
この状況から導き出される答えは、一つだった。
サダトはすぐさまマシンアペリティファーを起こし、エンジンを掛ける。原子炉プルトニウムの叫びが、主人に劣らぬ深手を負った車体を強引に蘇らせた。
各部から煙という名の悲鳴を上げつつ。それでもマシンアペリティファーは、主人を運ぶために力を振り絞っていた。
「……行くぞ、アペリティファー。これが最後でいい、俺をあそこまで運んでくれッ!」
そして――上向きに横たわる瓦礫を足場に、一気に助走を付けて駆け上がり。サダトを乗せたマシンアペリティファーは、再び空中へと飛び立つのだった。
行く先は、亀裂の向こう。
その最果てに待ち受けているであろう、あの巨大怪人だ。
「これ以上……させない! 絶対、絶対にッ……!」
どれほど怒ろうと嘆こうと、決して戻らない命の群れ。現世を離れていくその魂を、看取る暇さえ惜しむように。
サダトはエンジンを限界以上に噴かし、強引窮まりない加速で宙を駆け抜け、亀裂と大穴の先へと突き抜けて行く。
そこで待ち受けている異次元が自分の理解を超えた、凄まじい戦火の中であることも知らず
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