第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第8話 蒼い光
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巨大怪人は、とうとう身を支えきれなくなったのか。
大きく両手を広げながら、うつ伏せに倒れ伏していく。
あれだけの巨体が、再び立ち上がり体勢を整えるにはかなりの時間が掛かるはず。この空域を離脱するなら、今しかない。
ヘリ部隊の誰もが、そう確信していた。
――だが。彼らが目にしたのは。
巨大怪人が海上に倒れ伏す瞬間。では、なかった。
「なに、あの体勢!?」
「何をするつもりだ!?」
うつ伏せに沈む直前。両手を前に突き出し、腕立て伏せのような体勢になった巨大怪人は、すぐさま両足をガニ股のように広げる。人間の体型のまま、飛蝗の真似をしているような格好だ。
さらに、紅い複眼は水平線の彼方を映している。その視線の直線上には――ヘリ部隊と231便も含まれていた。
だが、彼女達が異変を感じたのは、その格好だけではない。紅い複眼から光を迸らせ、巨大怪人は己の上顎と下顎を全開にしていたのだ。
人間の肉片と血で汚された、その大口は裂けそうなほどに広がっている。
さらに、あれほどふらついていたのが嘘のように――その姿勢は微動だにしない安定性を保っていた。
そして。
深緑のプロテクターは鈍い光を放ち――発熱したかのように、蒸気を立ち上らせた。
上顎と下顎の間……口の中から、蒼い光が浮かび上がってきたのは。
その、直後である。
「――いかん! 散開だ! 全機散開ッ!」
その光が、何を意味するのか。あの体勢は、何のためか。
わからないことばかりではあったが――それでも、「逃げねばならない」という本能の叫びは、操縦士の焦燥感を突き動かしていた。
しかし、もう全てが遅い。
巨大怪人の口から閃いた蒼い輝き。全てを飲み込む、熱く、激しい煌めき。
それが操縦士の。射撃手の。ヘリ部隊全員の。
――231便に乗っていた乗員乗客の。
『キレイナ、ミズ。モット、キレイ……ミズ、キレイナ、セカイ……トウサン……』
最期に見た、光だった。
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