第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第5話 飛蝗怪人の猛威
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に動くことが出来ずにいた。
出血が続く肩口を抑えながら、息を荒げてなんとかサダトは立ち上がる。一方、怪人は胸に刻まれた傷口から煙を噴き上げ、苦悶の声を漏らしていた。
――今の一撃は、さすがに効いたか。そう見るサダトは攻略への糸口を感じ、僅かに安堵する。
……仮面に隠された、その表情が一変するのは、この直後だった。
「……!?」
「アガッ……アァアァア!」
傷を負った怪人は、僅かに落ち着きを取り戻すと――突如声の色を変え、辺りに散らばった白い破片を掻き集め始めた。無我夢中で放った今の一撃で、打ち砕かれた頭蓋骨だ。
怪人は狼狽と嗚咽を混ぜ合わせた唸り声を、室内に響かせながら……必死に頭蓋骨のカケラを集めている。人間としての理性を感じられなかった先ほどまでとは、まるで雰囲気が違う奇行だった。
(な、んだ……!?)
その様子を訝しむサダトは、怪人の様子を伺うように息を殺す。――すると。
「ト……ウサン、トウ……サン……!」
「――ッ!?」
喋った。確かに、喋っていた。
人ならざる彼の口からは、間違いなく人間の言葉が漏れている。掠れたような声色ではあるが、この静かな空間では聞き間違いようもない。
だが――人語を発するその怪人は、対話の余地など全く見せない。今まで敵と認識していたはずのサダトを完全に無視して、ただ懸命に頭蓋骨の破片を拾い集めている。
やがて、彼の両手の平に白い破片の山ができた。
「ア、アァ……」
しかし当然ながら、それで元通りになるはずもない。粉々に砕かれた頭蓋骨は、砂が零れ落ちるかの如く手から離れていく。
それをただ見ているしかない怪人は、深い落胆と哀しみに満ちた声を漏らしていた。その外見とはまるで噛み合わない、人間味に満ちた声色で。
(完全に理性が失われた怪人、とは違うのか……!? どうする、この隙に逃げるか仕掛けるか……)
そんな彼の様子を伺いながら、サダトは思案する。
人間を喰らう怪人である以上、人里に降ろせば甚大な被害が予想される。可能であれば、この場で始末するしかない。
だが、この怪人はまだ底が知れない。自分も手負いである以上、迂闊に仕掛けて返り討ちに遭えば本末転倒である。
先ほどの一閃を受けても、あれほど動き回っている点から見れば、決定打を与えられたようには感じられない。
――サダト自身の、怪人達との闘いで培ってきた経験則から判断するなら、もうしばらくは様子を見る必要があった。
しかし。
啜り泣くような嗚咽を吐き出す怪人が、次に放ったのは――空間も、世界も、全てを打ち砕くかのような咆哮であった。
「……が……!?」
その絶叫に反応する間もなく――サダトの身体が一瞬にして、壁に
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