第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第4話 異形の飛蝗
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汗が伝った。
「……ん?」
すると。立ち上がったサダトの目にふと、机に放置されていた書類が目に留まった。紙一枚で散らばった他の書類と違い、しっかりとファイリングされているそれは、彼の関心を強く引きつける。
「……」
書類は埃まみれな上に、紙そのものがかなり古ぼけているようだった。さらにページのあちこちが血塗れになっていて、字が滲んで読めない部分が非常に多い。
だが、人型の図面を描いたページはある程度はっきりと読むことができた。
「アグ、レッサー……?」
そう名付けられた人型の何か――恐らく怪人だろうか――の全体像を描いた図面。それを見つめるサダトは、眉を顰める。
飛蝗の遺伝子を組み込んだ人型の怪人。それを第一形態とし、段階的に進化する――という旨が書かれていた。……進化する怪人。ますます見たことがない。
(ここのアジトは、こいつを造っていたのか……。くそ、この資料を解析できれば、もっと情報も手に入っ――ん?)
その時。
なんとか情報を集めようと資料を凝視するサダトの目に、ある文字が留まる。それは、見取図の隅に小さく記されていた。
……血の滲みから免れたそれに書かれていたのは、彼が知っている名前であった。
(……! これは!)
――『開発主任:割戸神博志』。確かに、この資料にはそう書かれている。
かつて城南大学の教授であり、パラレルワールドの実在を主張していた彼が。このアジトでシェードに与して、怪人の開発に携わっていた。
その決定的証拠を、掴んでしまった。薄々関係があるのでは……と感じつつも、敢えて目を逸らしてきた現実と直面し、サダトは唇を噛み締める。
(教授……どうして、こんな……)
割戸神教授とは、親交はおろか面識すらない。どのような人柄なのかも知らない。
だが、同じ大学に身を置いていた人物であることには違いない。シェードが絡まなければ、自分の先生になっていたかも知れない。
そんな人物が怪人の開発に関わっていたなどとは、そうかも知れないとわかっていても、認めたいものではなかった。
(教授……)
深い落胆を覚えながら、それでもサダトはページに目を落とす。すでに教授も、この怪人の手に掛かっているのだとしたら……弔いの戦いに臨める者は、自分しかいない。
死んでしまえば、敵も味方もないのだ。
「……ん?」
ページを捲って行くと――やがて、古びた写真を幾つも貼り付けたページに辿り着いた。まるで五寸釘でも打ち込んでいるかのように、まばらに貼り付けられた写真の数々。
そのチョイスに、サダトは既視感を覚える。
(これは……)
寝たきりになった老人。苦痛に歪む顔。生気を感じない表情。それを診察する医師の
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