第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第2話 仮面ライダーAP、南雲サダト
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絶たない昨今においては、この考えが世論の主流であった。
特に右翼寄りの勢力からの支持が多く、警察や自衛隊の特殊構成員として引き入れるべきという意見もある。
だがその一方で、正義を騙り公然と人殺しを繰り返す殺人鬼として、強烈に批判する見解もあった。その背景には、シェードによる改造手術を受けた被験者問題がある。
2009年にシェードの非人道的な人体実験が明るみになり、組織は解体されたのだが……それで改造されていた被験者達が元通りになれるわけではない。
身体を人外の兵器にされた挙句、居場所も奪われた被験者達が路頭に迷い、異形ゆえに人間社会から追放された影響で凶行に走るという、社会問題にまで発展してしまった。
これを受けて、政府はただちに改造被験者保護施設を全国各地に設立。シェードに改造され、かつ民間人への害意を持たない被験者達を隔離にも近い形で保護することになった。改造人間にも、人権が保障される制度が組まれたのである。
そんな彼らにとって、シェードの怪人とあらば問答無用で抹殺に掛かる仮面ライダーは、まさしく「死神」であった。
仮面ライダーの標的はシェード残党の暗躍に関わる怪人のみであるが、詳細を知らない元被験者達の間では「仮面ライダーに殺される」と錯乱状態に陥る者が続出。これを受けて、一部の人権保護団体が仮面ライダーを差別主義の殺人鬼と糾弾し始めたのである。
そうして世論が二手に分かれた今も、仮面ライダーとシェードの戦いは続いている。
だが、シェードを倒したとしても、仮面ライダーに勝利は来ない。
異形の存在を受け入れる居場所がないことは、改造被験者保護施設の存在が証明している。平和が訪れたとしても、そこに安住の地はない。
この広い世界に、仮面ライダーは独りなのだ。
(……俺の居場所も、ここじゃないのかもな)
シェードも仮面ライダーもいない世界なら。改造人間が普遍的に暮らしている世界なら。……そんな世界が、あるなら。
きっとそこに、自分の居場所もあるのではないか。ここよりもっと、相応しい場所があるのではないか。
隣の芝生は青く見える、ということかも知れないが……それでも。似て非なる異世界が実在するというのなら……それを求める割戸神教授の思想にも、共感してしまう。
気がつけばこうして、彼の著書を手に取っているのが、その本心の顕れであった。
――だが、その時。
林の向こうから響き渡る悲鳴が空を衝く。その断末魔にも似た叫びを聞き、サダトは我に返るように石段から立ち上がった。
「……ッ!」
考えるよりも速く。サダトは傍らのマシンアペリティファーに跨り、エンジンを噴かせる。
プルトニウム原子炉を動力源とする改造人間用のスーパーマシンは、主人を乗せて猛烈に
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