第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第2話 仮面ライダーAP、南雲サダト
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そして。
この「Gの世界」における、第二の「仮面ライダー」が出現してから三ヶ月。
シェードの中から、さらなる暴威が目醒めようとしていた。
◆
――2016年8月24日。
東京都奥多摩町某所。
「……」
蝉の鳴き声。川のせせらぎ。小鳥の囀り。
都市開発がこの国で最も進んでいる東京の一部とは思えないほどに、自然の音色に彩られたこの空間の中で。
赤いレザーベストに身を包む一人の若者が、石段に腰掛け一冊の本を読みふけっていた。
夏の風に黒髪を揺らす彼の傍らには、真紅に塗装されたバイク「VFR800F」をベースとする改造人間用二輪車「マシンアペリティファー」が置かれている。
(相互に影響し合う、複数の世界――か)
木陰の中でページを捲る若者……もとい南雲サダトは、手にした本の一節を静かに見つめる。その本の表紙には、「パラレルワールド 互いに干渉する異次元」という題名が記されていた。
オーストラリアのとある高名な学者が提唱する、今ある世界とは全く違う歴史を歩んだ異次元の存在を、科学的考証に基づいて証明した論文を元に、日本の大学教授が学術書として著した一冊である。
裏表紙には、「割戸神博志」という著者名が記されていた。
(城南大学の元教授、か……。2009年に消息を絶っているって話だけど)
生物学を専門とする、某県出身の老教授。当時から偏屈者として知られていたらしい。
サダトが入学してきた頃には、すでに割戸神教授は大学から姿を消している。
――それに彼が行方知れずとなった時期は、シェード残党の武装蜂起にも重なる。
やがて、訝しむような面持ちでページを捲る彼の目に、あるページが留まった。終盤であるその項は、オーストラリアの論文の解釈ではなく――割戸神教授自身の主張が記されている。
――『この国には、この世界には偽善と欺瞞が溢れている。平和を謳いながらマイノリティを公然と迫害し、誰もそれを咎めない。この世界に生を受けていながら、この世界に居場所を見出すことができない。それを是とするならば、我々はもはや他の世界に居場所を求める他はないのかも知れない』。
その一節は、この世界への深い絶望と諦観を滲ませていた。
(居場所を見出すことができない……か)
サダトは神妙な面持ちで、その文面を見つめる。
――無差別テロを繰り返すシェードの怪人。
その脅威から人々を守り続けてきた仮面ライダーに対する民衆の反応は、真っ二つに分かれていた。
怪人達から被害を受けている大多数の一般市民は、人間の自由と平和を守る正義の味方として、惜しみない賞賛を送っている。
現実問題として、シェードのテロ行為による被害が後を
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