第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第1話 闇夜を貪る異形の影
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血の滴りがなければ。
「あ、あれだけの数の遺体が、どこへ……!」
「もしかして、犯人が食べちゃった……とか?」
「……いや、それはない。チ級が喰われた痕は、そんな大きさじゃなかった」
川内が間近で見たチ級の傷口。僅かな肉だけで上半身と下半身を繋いでいた、その部分には、凄まじい力で食いちぎられた痕跡があった。
だが、その傷口の形――即ち歯型は、鮫の類とは違う形状であり、しかも歯型自体はそこまで大きなものではなく……犯人は、自分達と大して変わらない体長の持ち主であることが推察された。
少なくとも、無数の遺体を丸呑みにしてしまうような大きさではなかったはず。
それに、他の遺体にも同じ形状の歯型が幾つも残されていた。跡形もなく深海棲艦を喰らい尽くせるような存在に、わざわざ獲物を小さく噛んで遺体を残す意味があるとも思えない。
つまり……無数の深海棲艦を食い散らかした「何か」と。大量の遺体を跡形もなく捕食した「何か」がいることになる。
「何か」は、二体いるのだ。
「……ッ!? なに、あれ……」
その事実に至り、三人の全身が総毛立つ瞬間。何もかも消え去った海中の果てに、「何か」の影が揺らめいた。
見間違いではない。
影は徐々に大きくなり、彼女達が見たことないシルエットを膨らませている。
「……!」
その先にあるものを、凝視した先には。
――巨大。
その一言に尽きる、飛蝗の顔が。
三姉妹の視界全てを埋め尽くすように、広がっていた。
そして。
その口元から、僅かに覗く深海棲艦の肉片。それを目の当たりにした彼女達の絶叫が、夜空の果てへと轟くのだった。
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