第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第1話 闇夜を貪る異形の影
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も。那珂も。誰一人、声が出せずにいた。凍りつく三姉妹が、足下の海中を見下ろした先には――おびただしい数の、深海棲艦の遺体が漂っている。
鮫型の「駆逐イ級」、「駆逐ロ級」、「軽巡ト級」。チ級と同じく、人間に近い部分を持っている「軽巡ホ級」。
何十という深海棲艦の群れが、身体のあらゆる箇所を食い荒らされ、海中に没していた。たった今、沈もうとしているチ級も、その仲間入りを果たそうとしている。
彼女達が感じていた、奇妙なまでの静けさ。その理由が、ここにあった。
「な、なに!? なんでみんな食べられて……だ、誰が!?」
「川内姉さん、これは……」
「……ああ、間違いない。このチ級も、海の下のこいつらも、みんな何者かに喰い殺されたんだ。……これが、ここ暫く連中の姿が見えなかった理由、か」
鮮血が纏わり付く自分の手を一瞥し、川内は眉を顰める。通信がなくとも話せる位置まで集まった三姉妹は、三方向に背中を預け合い、揃って剣呑な面持ちになった。
……正体は不明。だが、チ級もろとも無数の深海棲艦を捕食するほどの「何か」がいることは間違いなかった。
ならば、速やかにその実態を突き止めねばならない。「何か」の目的も何もかもわからないままではあるが――自分達にある意味近しい深海棲艦が喰われている以上、艦娘の自分達が捕食対象外とは限らない。
その可能性を、言葉にするまでもなく危惧した彼女達は互いに頷きあうと、ライトを下に照らす。
深海棲艦を喰らう者。そんな未知の脅威が、水平線に浮かんでいるとは限らない。第一、海にその「何か」がいるとするなら、夜戦に特化している自分達が気づかないはずはない。
なら予想される「何か」の出処は、海中。そこに潜んで獲物を捉え、深海棲艦を喰らい尽くしていたとするなら……今まで自分達が見つけられなかったことにも説明がつく。
「……えっ!?」
「うそっ!?」
「どういう……こと!?」
だが――三人はライトで照らした海中を見下ろした途端、驚愕の表情となる。
あれほどまばらに漂っていた、無数の遺体が。おびただしい数の、遺体の群れが。
忽然と、その姿を消していたのだ。
三姉妹が一箇所に集まるまでの、僅かな時間。その間だけ、三人とも海中から目を離していた。
一分はおろか三十秒にも満たない、その僅かな時間の中で、大量の遺体が海中から消え去っていたのである。
一体、何がどうなっているのか。三姉妹の誰もが、その答えを見つけられずにいた。
もしかしたら、幻か……何かの見間違いだったのではないか。そんな考えも過っただろう。……今この瞬間も、川内の手に纏わり付く鮮
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