第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第1話 闇夜を貪る異形の影
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を見せない。対して、川内達三人は砲身を向けながらジリジリと近寄っている。
川内が考えている通り、ここまで無防備なまま接近を許していては、迎撃する前に撃たれてしまうだろう。仮に正面の川内を撃てたとしても、すぐに両脇から神通と那珂に撃たれてしまう。
いくら夜間の雷巡チ級といえど、この状況を脱せられるほどの性能はないはず。――川内の表情は、さらに険しくなった。
『……距離、10。川内姉さん、このチ級は一体……?』
『やっぱり寝ちゃってるのかな……?』
「……」
彼女に合わせて近づいてきていた妹達も、さすがに違和感を覚えたらしい。訝しむような声色で呟く彼女達は、互いに顔を見合わせる。すでに互いの顔が鮮明に見える距離だった。
あとほんの少し近づけば、姉妹間の通信すら無用になるほどの距離になる。そこに思い至った川内は、暫し思いふけると――意を決するように顔を上げた。
「……よし。私がゼロ距離まで接近して調べてみる。二人は万一に備えて援護してくれ」
『え……!? む、無茶です川内姉さん! もしそこでチ級が動き出したら……!』
『そ、そうだよいくらなんでも!』
「大丈夫。……大丈夫な、気がするんだ」
もしかしたら、チ級の生態を調べることができるかも知れない。今まで遠距離で撃ち合い、沈めるしかなかった深海棲艦にそこまで近付くのは初めての経験だが……この謎の敵の正体を解き明かす手掛かりにもなりうる。
そう思い立った川内は、危険を承知で深海棲艦にゼロ距離まで接近することに決めたのであった。力強い長女の声色を聞き、妹達は不安に表情を染めつつも見守る他なかった。
川内は滑るように航路を変え、チ級の背面に回りこむ。そして、息を殺して近寄っていくのだった。
(距離、9。8。7)
心臓が高鳴る。それは期待か、不安か。
(6。5。4)
緊張が走る。妹達の心臓が悲鳴を上げ、長女の顎から汗の雫が滴り落ちる。
(……3、2……)
とうとう、ここまで来た。もはや、引き返せはしない。手が届く直前まで近づいてしまった彼女は、初めて見るチ級の鮮明な身体に息を飲む。
(1。……0ッ!)
そして。ついに。
容易く触れることができる距離まで……近づいてしまった。心臓が止まるような、強烈な緊張に震えながら……彼女は微かに震える手で、深海棲艦の柔肌に触れる。
(……こ、れが……)
それは、自分達艦娘とさして変わらない……柔らかな感触だった。体温というものをまるで感じない冷たさではあるものの、彼女の指に伝わる感覚は、妹達や仲間達と触れ合う時とどこか似ているようにも感じられた。
(すごい……なんだか、まるで……)
その未知の感覚に驚嘆しつつ、川内は撫でるように上から下
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