第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第1話 闇夜を貪る異形の影
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50。対象、未だ変化なし』
『変だね……かなり近づいてるのに』
「無防備と見せかけて、こちらを引き付ける算段かも知れない。油断するなよ」
川内の視界に映る、神通と那珂の影が徐々に大きくなっていく。対象のシルエットがさらにはっきりと見えるようになってきた。
通常の深海棲艦なら、とうにこちらに気付いて攻撃してくる間合いだが――まだ、動きはない。
『距離200。未だ、変化はありません』
『……寝てるのかな?』
「こっちの領海のど真ん中でか? ……ていうか、この影の形は……」
それからさらに接近し――対象まで距離150、といったところで。
遂に、対象のシルエットが明らかになる。
――「雷巡チ級」。
顔を黒鉄の鉄仮面で覆い隠し、下半身を機械の塊で埋め尽くした深海棲艦の一種。夜間での戦闘を本領とする種であり、この時間帯においては脅威になりうる存在だ。
(……間違いない、チ級だ。やっぱり深海棲艦だったのか。……でも、妙だな)
対象は未確認の新手ではなく、すでに交戦経験もあるチ級だった。……が、それだけに違和感も大きい。
川内は夜戦を得手とする自身の特性上、同じく夜間で性能を発揮するチ級とは何度も戦ってきた。この鎮守府で最も夜戦慣れしていると言っても、過言ではない。
そんな彼女の経験則を以てしても――これほど無抵抗で接近を許すチ級との遭遇は初めてのことであった。
夜戦に精通する彼女だからこそ感じる、えもいわれぬ違和感。その実態――あのチ級に隠された秘密を解き明かすまで、油断はできないだろう。
『距離100。川内姉さん、これはやはりチ級では……? どうします?』
『まだこっちに気づいていないみたいだし……先制して仕掛けるのもアリじゃない?』
「……いや、もう少し様子を見る。少なくともこの距離なら、いつ相手が動いてもこっちは絶対に外さないんだ」
もしかしたら、このチ級から深海棲艦の新たな情報が得られるかも知れない。今まで発見されなかった習性があるなら、その全貌を見極める価値はある。
川内は近づいてくる妹達に指示を送ると、正面からチ級の影に近づいていく。その間合いはすでに、50を切っていた。
(もう目と鼻の先か……。これ以上引き付けたって、撃つ姿勢に入る前に撃たれるのが関の山だ。それがわからないチ級とは思えないが……)
しかし、ここまで近くに来てもチ級の影に変化はない。微動だにしないまま、川内達の接近を許していた。
この近さとなると、もう夜間でも全体像がハッキリと見えてくる。鉄仮面で素顔を隠し、下半身を機械に埋め尽くすその出で立ちは、紛れもなく雷巡チ級のそれであった。
彼女は居眠りでもしているかのように俯いたまま、全く動き
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