第二章 巨大怪人、鎮守府ニ侵攻ス
第1話 闇夜を貪る異形の影
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
診のため大本営に出張しており、現在は秘書艦を務める戦艦「長門」と「陸奥」がその役割を代行しているが――彼女達も詳細を語ろうとはしなかった。
だが、機密保持という鉄則を鑑みればその姿勢は当然であり、部下である艦娘達もそれについては理解しているため、詮索する者は一人もいなかった。
だが。それを鑑みても――この日の静けさは異常過ぎると、彼女達は感じていた。
「妙、ですね。静か過ぎる……」
「今夜だって、かなり沖の方まで踏み込んで哨戒してたのに……一匹も影すら見えないなんて、ちょっと変だよね」
次女と三女が、そうして訝しげに互いを見合わせていた時。先行する長女は独り、前方の水平線を眺めて居た。
「……!」
闇一色の空を映したように、暗く淀んだ海原。その並行であるはずのラインの上に――うっすらと。
何かの影が、見えたのだ。
「……いたいた。神通、那珂。0時の方向に何かいる」
「えっ……!? どうしてこんなところに!? 索敵を潜り抜けて来たというの……!?」
「ほ、ほんとだ。なんであんなところに……」
「とにかく、あの影の実体を探ろう。散開するよ」
夜戦で培った暗視能力は、伊達ではない。素早く敵影を発見した川内は、指先で二人に散開を指示するとスピードを落とし、音を殺す。
その指示を受け、次女と三女は互いに顔を見合わせて強く頷き、左右に航路を変えた。
(あんな場所に、単独で……。ウチの艦娘じゃないことは確かだよね。でも、万一にも誤射だけは避けたい)
妹達が散らばって行く様を見届けた後、川内は耳に手を当て上司と連絡を取る。
『こちら長門だ。何かあったか?』
「進路上に、彼我不明の人員一を確認しました。これより誰何に入ります」
『なに? そんなところにか……? ……わかった。何か対象に変化があれば、速やかに報告しろ』
「了解しました」
通信から返ってきた凛とした声に、川内は厳かに頷くと、夜目を利かせて眼前の正体不明の物体を注視する。
その「何か」は那珂と神通に包囲されても微動だにせず、海上に静止していた。
『こちら神通。所定の位置に到着しました』
『こちら那珂ちゃん! こっちも着いたよ!』
「よし……神通、那珂。これより、あの人員一の正体を誰何する。逸るなよ、二人とも」
『了解しました』
『了解〜っ!』
目測距離は約300。三角状に散開した川内型三姉妹は、中央で静止する対象を凝視しつつ――緩やかな速度で接近を始める。
僅かな波の揺れも起こすまい、と慎重に歩を進める彼女達の影が、徐々に「何か」へと近づいていく。だが、「何か」は気づいていないのか、未だ反応を示さない。
『距離2
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ