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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
第十四話 作戦発動 その@
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えるように前に出てこい!見えない者は試合場脇まで来てかまわん」
 オフレッサー大将が細かな気配りを見せ──もちろんどこぞの悪魔の差し出すカンニングペーパー、『面倒くさいから全員まとめてかかってこい バラバラにしてやる』とか『今宵のトマホークはよく切れる』とか『豚はトンカツ屋へ行け』とかは全部ちゃんと無視である。というか見えていない──、客席の学生が移動を始めたこともいい目くらましになった。
 「さあ、公子、試合の順番を決めに行きましょう」
 「おう、私が一番に決まっているがな!」
 「そうなってくれるようにこれから大仕事さ」
 ブルーノに伴われて試合場に降りていくオイゲン公子の背中に呟くと、俺は試合場で待機しているアレク──バルトハウザーとシュラーに目配せした。
 『うまくやってくれよ』
 『任せとけ』『もちろん』
 間髪入れず、二人が目線で答える。
 いかにも優男風のシュラーは負け役だ。剣が得意ということはオイゲン公子も知っているから、戦斧で負けても不審に思われることはない。シュラーに勝って自信満々になった公子をアレクが打ち負かして挑発し、俺たちが二人がかりで挑む。そして仕上げに手の内を知っているルーカスが叩きのめし、俺たちが幼年学校に出席するよう説得する。ここまでの段取りに比べれば百倍も簡単な作業ではあるが、万が一にも返り討ちにあったり叩きのめし過ぎたりすれば全ての準備が台無しになってしまう。
 ようやく漕ぎつけた最終段階を無事完遂すべく、俺は試合場の脇で深呼吸して全身の筋肉と神経を末端に至るまで完璧に掌握することに全力を注いだ。

 「ん?こいつら……」
 「気付いたかい、アルフ。校長先生にお礼を言わなくっちゃね」
 試合場に整列して抽選が始まった時、俺とブルーノはもう一つの幸運、おそらくは正解を積み重ねたことで引き寄せた幸運に気付いた。
 計画の準備段階でシュテーガー校長にも一役ならず役を割り振って顔を立てたおかげか、校長は俺たちの作戦の仕込みに積極的に協力しようという気になってくれたらしい。
 オフレッサー大将への挑戦に名乗りを上げ、試合場に降りてきた幼年学校、士官学校の生徒は俺たちより戦技の実力が劣るか、一番強い奴でも互角程度の技量の奴ばかりだった。あの連中なら、俺たちもアレクたちも一番強い奴と当たっても負ける可能性はない。弱い奴は力任せに斧を振り回すしか知らないオイゲン公子の実力でも十分倒せそうである。公子を消耗させてひやりとさせる程度には粘れるだろうが、まず勝つことはありえない。
 「ああ。こいつらなら誰が誰と当たっても大丈夫だ。試合展開も読めるから安心して見ていられる。功労章ものだぜ」
 「僕ら同士で当たった時の方が心配だ。芝居がばれないか、ね」
 「そうなったら派手に叫んだり飛んだり跳ねたりするさ」 
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