折れ曲がりストレート
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事にもはしゃぐような、そんな子供であるはずなのだ。なのに彼女は年不相応で、時折暗い目をする。それは四歳の少女がしてはいけない目だ。この世の汚いものを知らないはずの、生まれてやっと四年目の子供がするはずのない目だった。
「……ティア」
「何かしら、マスター」
くるり、椅子を回転させてこちらを向く。真っ直ぐに、見つめるどころか凝視するように向けられた目は透き通るような群青で、何故だかほっとした。
マカロフは、彼女に何があったのかを知らない。彼女の弟がどこか姉に他人行儀な理由を知らない。その兄が時々周囲の大人を見定めるような目をする意味を知らない。何が彼等をこうしてしまったのか、欠片だって解らない。
知らない事だらけの中で、だからマカロフに言えるのはこれだけだった。
「お前はお前のしたいようにすればよい。一人でいるも良し、誰かといるも良し。…だが、これだけは忘れるな。お前の家族はここにおる。このギルドは、皆お前の味方で、家族じゃ」
向けられる群青を真っ直ぐ見返して、言い聞かせるように。
「何より元気である、ワシはそれ以外は望まん。お前が元気でいるのなら、ワシはそれでよい」
ぽん、とその頭に手を乗せる。振り払われるかと思ったそれを、ティアは大人しく受け入れていた。
そっと、伝わればいいと願いを込めて、優しく撫でる。
「ワシ等は仲間であり家族。ここはお前の家じゃ。……いつでも、帰っておいで」
きっと、伝えたい事の半分も届かなかっただろう。けれどそれでもいいと、いつか解ってくれる日が来ればいいとだけ思った。
瞳に困惑の色を薄く滲ませた彼女は、ぽつりと「変なマスターね」とだけ呟いた。
―――――家族。
そう言われて思い浮かべられる顔は二つ。いや、実際にはもう少し浮かぶのだが、それを家族と呼ぶのはどうにも不愉快で、結局削除してしまうのだ。
異母兄弟の兄と、双子の弟。四歳の頃に初めて出会った、ティアが唯一家族と断言する二人。両親だの祖父母だのの顔なんて、思い出してやりたくない。
(評議院直々っていうから余程かと思ったけど、大した事なかったわね。もっと厄介な仕事かと思ったけど、そうでもなかったし)
ギルドに入って数年。最近では同世代も少しずつ増えている。理由もなく服を脱ぐ露出魔だとかやたらとタロットカードで何かを占っている少女だとか、どういう訳が自分の後ろをついて回る無邪気な奴だとか、一癖二癖はあるメンツだ。
そんな中でも既に古株として扱われるティアには、その信用度と一定の実力から、時々高難度の仕事が舞い込んでくる。今回もその一つで、評議院からのご指名付きだった。あれこれ心配してくる弟と、対照的に何とかなるだろと軽く言ってみせる兄に見送られて行ったものの、わざわざ指
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