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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十七話 謀略の渦
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頷きながら問いかけた。

「その通りです、議長」
「ネグロポンティ君の心配は分かるが、優先すべきは長老会議を開催させることだな……。いいだろう、その方向で進めよう」
トリューニヒトがグリーンヒル総参謀長の言葉に同意した。ホアンもネグロポンティも頷いている。

「余り時間が無い、急がなければならんだろう」
「そうだなレベロ。君の言う通りだ、急がなければならん。ところで軍に聞きたい事が有るのだがね」

トリューニヒトの言葉にボロディン本部長、グリーンヒル総参謀長が微かに緊張するのが見えた。急ぐ必要がある、そう言ったにも関わらず何を聞こうというのか?

「何故、最初からこの案を出さなかったのかね。最初からこの案が提案されていれば、もっと余裕を持って対応できたはずだが……」
ボロディン本部長、グリーンヒル総参謀長の表情が曇るのが見えた。どういうことだろう、彼らはこの案を必ずしも望んでいない? それとも気付いたのは後になってからなのか?

「正直に申し上げますと帝国の真の狙いが見えなかったためです」
「?」
帝国の真の狙いが見えない? グリーンヒル総参謀長は何が言いたいのだ?

「帝国がルビンスキーの排除のみを考えているのであれば、フェザーン人の手でルビンスキーを罷免させると言うのはベストの選択でしょう。しかし、そうでなかった場合は問題が有ります」
「……」

「そうでなかった場合、つまり帝国の狙いがフェザーン回廊を利用しての同盟領への侵攻の場合ですが、その場合のベストの選択は帝国にフェザーンを占領させ、反帝国運動を起す事で帝国の侵略を防ぐ事です」
「……」

「今回、帝国からフェザーン侵攻の連絡が有った時、我々は帝国の狙いを特定できませんでした。ですから最悪の事態に備え帝国をフェザーンに侵攻させるべきだと考えたのです。議長閣下の共同占領案はその意味では最善のものだったと考えています」

「……なるほど、どうやら私は認めてもらえたわけだ」
トリューニヒトが多少、皮肉を込めて感謝したが、グリーンヒル総参謀長は表情を全く変えなかった。むしろボロディン本部長の方が僅かに不機嫌そうな表情を見せた。

「問題はこれからです。帝国からの提案を見ると、帝国の狙いはフェザーン回廊を利用しての同盟領への侵攻の可能性が高いと言わざるを得ません。それなのに我々が取れる手段は最善のものとは言い難い」

「今回の案では事態の先送りにしかならない、そういう事だね?」
「その通りです、議長。しかも先送りすれば内乱を終結させた帝国はより強大な国家となって我々に襲いかかるでしょう。厳しい未来が待っています」

グリーンヒル総参謀長の沈鬱な口調が部屋に響いた。確かに彼の言う通りだ、今回の策は一時凌ぎでしかない。皆同じ思いなのだろう、憂鬱
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