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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十七話 謀略の渦
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だろう。フェザーン資本の利用を求めてね……、現在フェザーンが所有している償還期限を越えた国債がどれだけあるか知っているかな? トリューニヒト議長」

私の質問にトリューニヒトがいささか決まり悪げに答えた。
「多額だとは知っているが、はっきりとは……」
「五千億ディナールだ」

五千億ディナール、その言葉に彼方此方で溜息が出た。
「今の同盟の財政能力では一時に支払う事は到底出来ない。増税か、或いは財源無しに紙幣の増刷をするかだ……。国債の増発などしてもだれも買わんだろうからな。だがフェザーンが手に入れば……、分かるだろう、皆が何を考えるか?」

僅かな沈黙の後、ホアンが口を開いた。
「最初はフェザーン資本の利用でもいつかは接収に向かう、そういうことだな、レベロ?」

「その通りだ。そして一度行なえば際限なくフェザーン資本を毟り取ろうとするだろう、麻薬のようなものだ、いけないと思っていても続けてしまう……」

誰もがフェザーンに対しては良い感情を持っていない。我々に戦争させておいて、その血を啜って肥え太っている。流した血の分だけ返してもらう。いくらでも自分を納得させる言い訳はたつ。

「そして気がつけばフェザーンは帝国に助けを求めるか……」
「……」
トリューニヒトが呟くように声を出した。その通りだ、それこそが帝国の狙いだろう。ボロディン本部長、そしてグリーンヒル総参謀長の話を聞いた今なら分かる。

「他に手は無いのかね」
ネグロポンティが苛ただしげな口調で問いかけた。咎めるような視線は軍人たちに向かっている。

「彼らを責めてどうするのだね」
「そういうわけでは……」
ホアンの言葉にネグロポンティが決まり悪げに口を濁した。

彼の気持は分かる、八方塞だ、誰かに当たりたくもなるだろう。帝国は二十四時間以内の回答期限を付けてきた。もう一時間近く消費しているが、何の進展も無いのだ。だがホアンの言うとおり、彼らを責めるべきではない。我々には彼らの協力が必要だ。

グリーンヒル総参謀長とボロディン本部長が顔を見合わせている。微かにボロディン本部長が頷くのが見えた。なにやら二人の間で言葉を交わさずに意思の遣り取りが有ったらしい。

「手と言えるかどうかは分かりませんが……」
「何か有るのかね?」
トリューニヒトの言葉に皆が視線をグリーンヒル総参謀長に向ける。

「フェザーンの中立性を帝国、同盟の手によって確立するのでは無く、フェザーンが自らその中立性を確立する、それが有ると思います」
「?」
フェザーンが自ら中立性を確立する? 一体どういうことだ? 皆が訝しげに顔を見合わせる中、グリーンヒル総参謀長の声が流れた。

「具体的にはフェザーン人の手でルビンスキーを追放させます」
「!」
「そんな
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