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第六話

                  第六話   練習
 六人の練習はその時その時で違っていた。学校でやったり、塾の後先生から教室を借りたり。塾でやるのが一番多かった。
「すいません、先生」
 好意で教室を使わせてくれる今田先生に礼を述べる。
「授業でもないのに」
「いえいえ、いいんですよ」  
 先生はにこにことそれに答える。
「魔法の練習にもなってますし」
「すいません」
「それじゃあ」
「そっちも頑張って下さいね」
 先生の広い家ではちょっとやそっと演奏しても平気である。あしてこの教室は魔法障壁でどんなに魔法を使っても音を出してもそれが外に漏れることはない。いたせりつくせりであった。
 六人は練習をはじめる。まずはベースだ。
「いいじゃない、今日も」
 華奈子が美樹のベースを聴いて言う。
「有り難う」
「梨花ちゃんのギターもね」
「最近あまり家では練習してなかったけれど」
「それでもここでしてるからね」
「そっか」
「そうそう。あたしと美奈子も」
「春奈ちゃんも上手いわね」
 美奈子は美奈子で春奈に声をかけていた。
「自信ないけれど」
「ううん、上手いから。安心して」
「そう言ってもらえると」
「赤音ちゃんもね」
「家でずっと音楽聴いてるんだ」
 赤音は明るい声で答えた。
「それでドラムも」
「そう、それいいわよ」
 赤音を励ます。
「やっぱり音楽はね。耳が大事だから」
「うん」
「華奈子はその点ちょっと変わってるけど」
「そうかな」
 美奈子の言葉を受けて顔をそちらに向ける。
「あたしは自分ではそうは思わないけど」
「変わってるわよ」 
 美奈子は双子の片割れにそう述べた。
「だって。身体で覚えるんだもの、一回で」
「身体で!?」
「それも一回で覚える!?」
 四人はそれを聴いて思わず声をあげてしまった。
「そうよ、踊って」
 美奈子が四人に答えた。
「すご・・・・・・」
「よくそんなことが」
「美奈子だって似たようなものじゃない」
 それに対して華奈子も言う。
「歌って覚えるんだから。それも一度で」
「一度!?」
 何と華奈子と同じである。
「だって私はそれが一番いいから」
 美奈子は言う。
「そうしてるだけよ。変じゃないわよ」
「いや、変じゃなくて」
「凄いって言うのよ、それ」
 四人はもう言葉もなかった。音楽にかけてはやはり二人の才能はスバ抜けていたのであった。

第六話    完


                 2006・8・27


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