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第四十話

                 第四十話  闘争心
 まずは雅美の番であった。彼女はまずはギターの演奏からはじめてきた。
「はじまったわよ」
「ええ」
 美奈子が華奈子の言葉に頷く。
「さて、どんなのかしら」
「ギターの演奏はいいわね」
 滑り出しはよかった。そしてそれからであった。
 歌を歌いはじめる。それがかなりいい。
「まずいかしら」
 美奈子がそれを聴いて呟く。
「これはちょっと」
「何言ってるのよ」
 だが華奈子がそれに言う。
「この程度で」
「この程度?」
「そうよ」
 彼女はあえて強気だった。ステージの裏から聴きながら言っていた。
「言っておくわよ」
「ええ」
 そして双子の姉妹に対して言う。
「あんたの方がずっと上手いわ」
「上手いのね」
「そうよ」
 今それをはっきりと言った。そしてさらに続ける。
「それであたしもね」
「そうね」
 美奈子はそれを聞いて微笑んできた。
「その通りね」
「皆もね」
 華奈子は次にこう言ってきた。
「皆あの人よりずっといけてるわよ」
「有り難う」
 四人もそれに応えてきた。
「あの程度で。あたし達には勝てないわ」
 華奈子の目は今熱く燃え上がっていた。その目で言う。
「見てらっしゃい」
「けれど華奈子」
「何?」
 美奈子がここで声をかけてきた。
「油断は大敵よ。見て」
「うっ」
 華奈子は美奈子に言われて雅美を見た。そこで思わず息を呑んでしまった。
「わかったわね」
「ええ」
 頷いた。頷くしかなかった。
「これは本気どころじゃないわね」
「そういうことよ。わかったわね」
「よくね」
 しかしその口元から不敵な笑みは消えない。華奈子の闘争本能はさらに高まっていた。それを止めることは誰にもできなくなってきていた。


第四十話   完



                 2006・12・26


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