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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十六話 白狐
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と言いだした。問答無用で呼び出す事も考えたが、それでは会議を持つ意味が無い。我慢せざるを得なかった。

「遅くなりました」
執務室のドアを開け、グリーンヒル総参謀長が入ってきた。急いできたのだろう、この時期に額に汗をかいている。
「座ってくれ、先ずは軍の考えを聞きたい」

トリューニヒトの問いに対してグリーンヒル総参謀長が椅子に座りながら答えた。
「その前に、帝国が提示した条件について再度確認させてください」
「いいだろう」

トリューニヒトがレムシャイド伯が示した条件を説明し始めた。レムシャイド伯が示した条件はそれほど理解するのが難解な代物ではない、但し実行できるかどうかは別としてだが……。

条件は八項目から成り立っている。
1、同盟軍のフェザーン駐留は帝国政府からの依頼によることを宣言する事。

2、同盟軍のフェザーンでの任務は帝国軍に代わってフェザーンの中立性を回復する事であることを宣言する事。

3、同盟軍のフェザーン撤退についてはフェザーンの中立性が確認された後の事とし、帝国、同盟両国の合意をもって行う事、合意無しでは撤退は行わない事。また兵力の増援についても両国の合意を必要とすること。

4、アドリアン・ルビンスキーの捕縛、或いは捕殺とその身柄の帝国への引渡し。

5、フェザーン自治領主を決める際には必ず事前に帝国の承認を得る事。

6、フェザーンにおける帝国高等弁務官の権利、安全、そして行動の自由を保障する事。

7、フェザーンに駐留する軍隊はフェザーンより帝国方面での軍事行動を行なわないこと。

8、自由惑星同盟はいかなる意味でも帝国に対し反帝国的な活動を行なわないこと。もし反帝国的な活動が有ったと帝国が認めた場合、自由惑星同盟はフェザーンに進駐する正当な理由、権利の全てを失う事。

グリーンヒル総参謀長はトリューニヒトが説明する間、一言も口を挟まず黙って聞いていた。時折メモに何かを書き込む。トリューニヒトの説明が終わると大きく息を吐いた。

「どう思うかね、総参謀長」
「正直に言いますと、フェザーンへの我が軍だけでの進駐は危険です」
トリューニヒトの質問にグリーンヒル総参謀長が答えた。

「危険とは?」
「帝国の提案では我々が帝国の代わりにフェザーンの内政に関与する事になります。つまりフェザーンの恨みを買うのは我々であって帝国ではない。そうでは有りませんか、議長」
グリーンヒル総参謀長の返事にトリューニヒトの表情が歪んだ。

「帝国の代わりに我々が汚れ仕事を行うというわけだな……」
「その通りです、ネグロポンティ委員長」
「面白くないな」
全く面白くない事態だった。しかしどうする?

「共同占領ならそのあたりのデメリットは防げました。いえ、それだけでは
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