第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#18
MILLENNIUM QUEENU 〜Grand Cross〜
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、 “エリザベスでなかったなら”
苛烈な気性と云えどオルゴンはもう少し冷静に対処したであろう。
自在法の構成、配置、そして運用式からただ粗暴な者に務まる術ではない。
しかし心中で渦巻く狂暴な感情、
“ソレ” は尊厳なる王すらも、一瞬で下等な淫獣以下の存在へと堕とす。
「――ッ!」
使うか使うまいか逡巡はあったが、
狂熱の炎で灼かれたオルゴンは最後の誇りすらもかなぐり捨てた。
数千年生きた強大な王も、初めて湧いたソノ感情の前には
蒙昧なる童も同然だった。
(――ッ!?)
暴虐の軍勢を前にしても怯む事のなかったエリザベスの表情が、
そこで初めて蒼白となった。
中空で浮くオルゴンの手の中に握られていた者は、
まだ生まれて間もない無垢なる赤子。
先刻オルゴンが行った暴挙の際、
周囲一帯の人間は喰らい尽くされた筈だが、
たった一人生き残りがいた。
或いはオルゴンの見落としだったのかもしれないが、
その子の母親が覆い被さるように娘を抱き、
暴虐の魔の手から我が子を護っていたのだ。
封絶の中で人は動けない、その発動の瞬間も知覚出来ない。
しかし、 「無」 から 「有」 が生まれ、強烈な光を放つように、
子を想う母の情愛は、この世のどんな理をも超える!
その想いの結晶が、嗚呼、何ということだろうか、
災厄を引き起こし二人を永遠に引き裂いた張本人の手に握られている。
これまでにない光輝がエリザベスの全身から迸り
空絶の速度で赤子を持つオルゴンに迫った。
しかし驚愕による一瞬の硬直により出足が遅れ、
その間にオルゴンは手にした赤子を無造作に放り自身の精神も移動させる。
暴虐が支配する戦場の直中に投げ込まれ、
石作りの大地へと落下していく小さな命。
エリザベスに、選択の余地は無かった。
或いはフレイムヘイズなら、喰われさえしなければ後で修復出来る、
見ず知らずの赤子よりも 「使命」 が大事、と割り切れたのかもしれない。
しかし、彼女は 『最強の波紋使い』 で在る以前に、
一人の人間、一人の女性、そして一人の母親だった。
飢えた獣にその身を捧げた聖女のように、
人類の 『罪』 を一身に背負って磔刑に処された聖者のように、
微塵の躊躇も覚悟すらもなく、空間を走って赤子を抱きとめる。
何も知らないまま、安らかに眠る子供の顔が腕に在った。
娘の成長を見届けられないまま、
消え逝くしかなかった母親はさぞ無念だったろうと心から悼んだ。
グッッッッッッギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ―――――
――――――――――――――――ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!
「うぐぅっ――!」
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