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二十八話:正直な気持ち
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能よ。夢見てんじゃないわよ!」
「―――ええ、そうですね」

 否定すると思われた言葉に、肯定の言葉を返す清姫。
 その行動に思わず意表を突かれ、泣き腫らした目を丸くする、ジャンヌ・オルタ。
 そんな彼女の目の前に立ち、清姫は真っすぐな視線で告げる。

「?をつくことはできません。私の願いはそれこそ子どもの夢のようなもの。あなたの言うように、叶えることは不可能」
「じゃ、じゃあなんで、そんなものを……」
「不可能ですが、それを諦めるというのは自分の気持ちに―――?をつくということ」

 清姫は嘘が何よりも嫌いだ。だから、決して夢を諦めない。
 諦めるということは、自身の心に?をつくということだから。

「ですから、私は諦めませんし、すべての?を許しません。なにより、私が最も嫌いな嘘は自分の心を偽ることですから」
「……だから目の前の嘘を許さないって言うの?」
「ええ、その通りです。世界から嘘が消えないのなら、せめて私の目に入る世界から、嘘を無くせるように努力するだけです」

 曇りのない済んだ瞳で宣言する清姫に、ジャンヌ・オルタは羨ましいと思う。
 彼女のように、自分の心に素直であれたら、どんなにいいだろうかと。

「あなたは自分の心を素直に表すべきです。?をつくことなく、正直に」
「知った口聞いてんじゃないわよ! あんたが私の何を知ってるっていうのよ!?」
「―――はい、何も知りません」

 またしても正直に開き直った返答に、湧き上がった怒りが再び収まってしまう。

「私は、私の心を正直に伝えているだけです。悪く言えば我儘ですが……?をつくよりもずっといいと思っています」
「……だとしても、何を言えばいいっていうのよ…?」
「思うままに、心の底から叫んでしまえばいいのです。自分に?をついて後悔するよりも、正直な気持ちを言って後悔する方が気持ちいいですよ? それに……あなたが想いを伝えるべき相手も来ましたし」

 そう言って、立ち去っていく清姫。
 彼女の向かう先には、傘もささずに走ってきたぐだ男の姿があった。

「旦那様。私はここでお暇させていただきます」
『清姫……君は―――』

 立ち去って行こうとする清姫に声をかけようとするが、唇に指をあてられて止められる。
 彼女が自分のことを好きなのは知っている。
 だから、何かを言わないといけない。だというのに、彼女は穏やかに微笑むばかりである。

「旦那様…いえ、ぐだ男様。もし、貴方様が私のことをほんの少しでも想ってくださるというのなら……決して、決して! ?をつかないでくださいまし。それがどんなに優しい嘘であっても」
『……うん、わかった』
「ありがとうございます。例え、あなたが応えてくれなくとも……お慕いしております」

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