二十八話:正直な気持ち
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「私に―――関わってこないでって言ってるのよ!!」
ぐだ男の顔が悲しみで大きく歪む。
ジャンヌ・オルタはその表情を見て、自分がとんでもないことを言ってしまったことに気づく。
だが、時は戻らない。口から出た言葉は決して消せない。
「……あ、い…や―――ッ」
全てが手遅れだという事実にどうしようもなくなり、彼女は背を向けて逃げ出していく。
今度は止めてくれる手も無ければ、心配してくれる優しい声も無い。
それが―――彼女の絶望をより深いものにするのだった。
走った。何もかもから、逃げたくて走った。
だから、今自分がどこにいるかもわからない。
だが、そんなことはどうでも良かった。
ただ、一つの絶望が心を占めていた。
「嫌…われた。嫌われた…! 嫌われたッ!」
涙と共に嗚咽が溢れ出てくる。
彼の悲しむ表情が目に焼き付いて離れない。
自分はもう本当の意味で彼と関われない。
その事実がジャンヌ・オルタの心をギリギリと絞めつけていた。
「あんなこと言ったんだもの……もう、元には戻れないわよ」
自嘲気味に、諦めの言葉を吐き出す。
「でも…これで、よかったのかもしれないわね…。もう、あいつも私に関わってこないでしょ。なら……もう、なにも痛くないもの…」
あんなことを言ったのだ。ぐだ男の方から距離を置いてくれるだろう。
それならば、もう何も恐れなくていい。
捨てられる恐怖も、嫌われる痛みも、愛してもらえない寂しさも、全てが消えてなくなる。
「……そうよ。これで…これで……よかったのよ」
自分を納得させるように呟く。
涙はもう止まった。
しかし、降り出してきた雨が、彼女の心を表すように頬に降り注いでいくのだった。
雨はやみそうもない。傘もない。
だが、感傷に浸るのを邪魔する人間はいた。
「嫌ですわね。とても嫌な臭いがします。酷く醜い―――?の臭いがします」
振り返ると、そこには薄ら寒い笑みを浮かべた清姫が、傘をさして立っていた。
「……なによ、笑いに来たの? 笑いたいなら笑えばいいわ。それか、あいつのとこに行ったら? 私はあんな奴のこと、どうでもいいし」
「また、?を重ねるんですか? 本当に救いようのない方」
憐れむような、軽蔑するような視線を向けながら清姫はジャンヌ・オルタに近づいていく。
それを拒む気力も起きないのか、ジャンヌ・オルタはただ、濁った眼を向けるだけである。
「私が何をしようが私の勝手でしょ? あんたには関係ないわよ」
「いいえ、大いに関係があります。私の願いは嘘のない世界ですもの」
「そんな願い不可
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