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SAO−銀ノ月−
第百十九話
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らも納得した明日奈に気づかれないよう、和人がこちらに小さく礼をする。

「よし……」

 勘のいい明日奈に何かを察せられないように、そんな和人の礼に返すようなことはせず。リハビリ用のアミュスフィアを慣れた手つきで装着すると、ユウキの待つVR空間へとログインしていった。


「あれ、ショウキ?」

 剣道場で興味ありげに木刀をジロジロと見ていたユウキが、翼はないもののALOのアバターそのものの姿で振り向いてきた。剣道場ということか服装は袴になっていて、いつもの軽装鎧とは印象がまるで違っていた。

「なんか動きにくいねコレ。ショウキやリーファはさ、いつもこれ着てるんでしょ?」

「ああ。慣れないとキツいみたいだな」

 とはいえ格好が変わっても、中身が変わるわけもなく。帯でキツく締められた部分や足元まで伸びた袴など、動きにくい部分を掴むユウキの表情は、相変わらずコロコロと変わって小気味よい。物心ついた時から身に着けている袴の着心地について、どこか他人ごとのように語りながら、髪の毛を弄りつつユウキに話しかけた。

「端末の居心地はどうだったか聞いてこい、ってキリトが」

「ああ、そういうこと。うん、アスナの肩に乗ってるみたいで、居心地はバッチリ!」

 どうして俺が来たのか得心がいったらしいユウキは、ガッツポーズをしながら俺の問いかけに答えてくれた。あの端末がユウキの身体というのならば、確かに明日奈の肩に乗っていると言えるのだろうか。

「そういえばさ。ショウキにアスナも、本名と同じなんだね」

「……ユウキもな」

 本名をわざわざ名乗っていなかったことを思い出し、改めての自己紹介は授業と授業の合間に済ませていた。しかしてSAO生還者ばかりのこの学校でも、明日奈やユウキ、俺のように、本名をそのままプレイヤーネームにしている者は他にはいない。

「みんな安直すぎるー、なんて言ってさ。シウネーだってそんな凝ってないのに!」

「凝ってなくて本名と違うプレイヤーネームに出来るなら、むしろ凄いんじゃないか」

「む。確かに」

 結局、ユウキにはあの端末についてさしたる不満はないらしく、俺の要件はすぐさま終わってしまった。とはいえ、すぐにさようならというのも芸がないので、ユウキと雑談に興じていた。まさかこの為だけに、和人は俺を呼んだわけではないだろう――と思っていたが、まさかこちらが勝手に、そう深読みしていただけだったのだろうか。

「……ん?」

「――プリヴィエート!」

 そんな不安を感じ始めていたその時、俺を安心させるかのように、そんな声が道場に響き渡っていた。そのロシア語の挨拶を出会い頭にかましてくる少女は、知り合いの中では一人しかいなかった。

「……セブン?」

「え
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