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STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#17
MILLENNIUM QUEEN 〜PHANTOM BLOOD NIGTMARE\〜
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 “さっきよりも遠くで”
他に動く人間はいませんのに」
 寄り添う形でそう言った後、
細い腰に回った手の存在(恐ろしいほど手慣れていた)に気づき、
ヴィルヘルミナは()慳貪(けんどん)に押し返す。
 可憐な衝撃で数歩後ろに下がったポルナレフは大袈裟に腕を広げた。
「フッ、どうやらオレの予想は正しかったようだな。
敵も、こちらの 「位置」 を探しあぐねているらしい」
「一体、どういう?」
 両腕を組んで不敵に微笑むポルナレフに、ヴィルヘルミナは訊く。
「先刻、ここまで逃げてくる間、
オレの “汗” を他の部屋のドアに(なす)り付けて置いたのだ。
スタンドを使って部屋の中にもな。
敵のレーダーはそれほど精密ではないのだろう。
だから正確な居場所が解らず、当てずっぽうに攻撃を仕掛けている。
ほら、また」
 割と近くで、部屋の中の物がメチャメチャに壊れる音がした。
 しかし差し迫るような脅威は感じず、寧ろ遠ざかっていくように想える。
 ポルナレフの言った事が正答だったという何よりの証。
 歴戦の死闘と修行で磨かれた、スタンド使いの経験。
「アノ騒乱の最中、そのような行為に及んでいたのでありますか?
相手の機能(チカラ)を見抜くと同時に」
小癪(こしゃく)
 正直、一番近くにいたのに全く気づかなかった
ヴィルヘルミナとティアマトーは、
その抜け目無い所行に呆れたような声を漏らした。
「フッ、か弱き女性を護る 『騎士』 としては当然の努め。
少しは見直して戴けたかな? 淑女(レディ)
 ポルナレフはそう言って傅くと、礼法に則って肩に手を当てる。
「……」
(姫?)
 甦る記憶。
 嘗て人間(ヒト)で在った時、
イヤというほど眼にしてきた空虚な光景、偽りの忠義。
 しかし目の前のこの青年の執る作法は、
他のどんな 「本物」 より鮮烈な印象を以てヴィルヘルミナに映った。
「少し」
 手に細剣(つるぎ)は持っていないが、
(かしづ)く騎士に歩み寄った古の王女は
そのまま柄を握る形で左手を差し伸ばす。
「本当に、少しだけであります」
「極小」
 存在しない剣の切っ先が、そっと右肩に当てられる。
 絶え間ない震動と荒れ果てた暗闇の一室で行われたその光景は、
何よりも神聖な中世の叙勲式(じょくんしき)のようだった。 



 時を同じく、ホテル一階。
 フロントからやや離れたロビーのソファーから、
無機質な電子音が継続的に流れる。
 前に据えられたクリスタルガラスのテーブルには、
色とりどりのキャンディ、ジェリービーンズ、マーブルチョコ、スティック等が
無造作に散らばっていた。
「ふぅ」
 その中の一つを摘み上げ、グロスで艶めく口唇に運ぶ
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