第六章
[8]前話
「そして手が届く範囲に見事に実った美味そうな果実を置く」
「しかしですね」
「飲もうとすれば水は下がり食う為に手を出せば果物は遠ざかる」
「そして絶対に飲むことも食うことも出来ない」
「未来永劫その苦しみを味あわせる」
「それがあの者への処罰ですね」
「そうだ」
その通りという返事だった。
「そうする」
「手が届きそうで届かない」
「そうした劫罰だ」
「怪物に対する」
「誰彼なく犯し我が子を殺し食わせようとした者だ」
そうした怪物だからというのだ。
「これは当然の報いだ、幾ら友人でもだ」
「それでもですね」
「許せること、許してはならないことがある」
「そしてあの者は許せないことをした」
「それ故にだ」
処罰を下したというのだ。
「神々の主、法と理を守る者として」
「そしてですね」
「友人としてもだ」
顔を険しくさせてだ、ゼウスはこうも言った。
「そうしたのだ」
「ですか」
「さて、ではだ」
この話を終えてだった、ゼウスは。
ヘルメスに対してだ、こうも言った。
「ヘパイストスを呼んでくれるか」
「兄上をですか」
「うむ、あの者に言っておくことがある」
「アテネ姉上とのことですね」
「兄妹だ、もっと仲良くせよとな」
「近頃今一つですね」
「関係がよくないからな」
そのことを察してのことだ。
「だから言っておこう」
「では」
「そして明日は兄弟達と話だったな」
「ポセイドン様、ハーデス様と」
それぞれ海界、冥界を治める主神である。ゼウスの兄弟達であり世界を三分に分けて統治している間柄だ。
「その予定でしたね」
「そこでも話すことがある」
「では」
「その用意もしておかねばな」
こうヘルメスに行ってだった、彼は主神としての責務を果たしに向かった。その表情は全てを背負い断を下すことを決意しているものだった。
タンタロス 完
2016・7・24
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