第五章
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「それはわかるな」
「ヘラ様に対して」
「不倫は」
「隠すことは欺きだ」
不倫についてはそうなるというのだ。
「そして試すこともだ」
「それもよいのですか」
「そうだ、むしろその試しに応えて力を見せる」
「神ならば」
「それだけの器が必要だ」
「ではそうしたことはいいのですか」
「わしは一行に構わなかった」
それこそ一切といった口調での返事だった。
「別にな」
「では断を下された理由は」
「我が子を殺したことだ」
ゼウスはヘルメスにまずはこのことを話した。
「そしてその屍を肉としたこともだ」
「食わせる、ですか」
「我々に食わせなかったなら人の客に食わせるかだ」
「自分自身がですか」
「そうしていた」
タンタロス、彼はというのだ。
「そう思ったからだ」
「だからですか」
「そうだ、あの者は人でなくなっていた」
「その心がですね」
「神性どころではない、人の心をなくしていた」
「怪物になっていましたか」
「聞けば家臣や民、奴隷の妻や娘を寝取るだけでなくだ」
ペロプスから聞いた話だ。
「己の息子や孫の嫁、実の娘や孫娘、かつては姉妹や姪まで手を出していた」
「それはまさに」
「怪物の行いだ」
タンタロスのそれはというのだ。
「それ故にだ」
「即座にですか」
「断を下したのだ」
まさにというのだ。
「ああしてな」
「そうでしたか」
「そうだ、このことを知ったのは断を下した後だったがな」
「人の心をなくしていたことはですね」
「あの時点でわかった」
馳走の肉料理を見たその時点でというのだ。
「まさにな」
「そうですか」
「そしてだ」
さらに言ったゼウスだった。
「あの者の佞臣達にも処罰を下したがな」
「父上の雷で」
「怪物に諂う者は放ってはおけぬ」
こう考えてだ、天空の神即ちオリンポスの主神として。
「そうした、それでタンタロスだが」
「同じ名のタンタロスに落としましたが」
「ヘカントケイル達に伝えておく」
タンタロスの番人達でゼウスの忠実な部下達である、ゼウスはティターン達に幽閉されていた彼等を解放しティターンとの戦いへの協力を得て勝ってからティターン達を逆にタンタロスに閉じ込めヘカトンケイル達を彼等の番人としたのだ。
「あの者への処罰をな」
「どういったものにしますか」
「首まで豊かな水をたたえた湖の中に浸す」
まずはそうするというのだ。
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