第二章
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「その時は」
「摂理が成り立ちません」
ヘルメスはゼウスに即座に答えた。
「その時は」
「嘘は法とは逆にあるものだ」
「それを逆手に取るものです」
「それを法を司る主神が言えばだ」
「この世の摂理が成り立ちません」
「だからだ」
このことがわかっているからだというのだ。
「私は嘘を言わないのだ」
「決して」
「タンタロスのことも同じだ、あの者が道を踏み外せばですか」
「その時はですね」
「容赦はしない」
それも一切、というのだ。
「そうする」
「さすれば」
「次の宴はあの者の宮廷で行われる」
彼が神々を招いているのだ。
「我々も出よう」
「それでは」
「また言うが驕りならいい」
その程度ならというのだ。
「そのうちに背中から転びだ」
「自らですね」
「頭を打ってわかる」
「そうしたものですか」
「それが驕りだ、しかし道を踏み外すとだ」
この場合はというのだ。
「どうにもならない」
「そのままタンタロスに落ちる」
「そうなる、そうした輩こそだ」
まさにというのだ。
「私は許さない」
「では」
「宴に出よう」
タンタロスが催すだ、ゼウスはこうヘルメスに話してた。
そのタンタロスはこの時眉を顰めさせていた、そのうえで側近達に言っていた。彼の前には血の海の中に倒れ息絶えている若者がいた。
その彼を見つつだ、側近達に言うのだった。
「こうなってしまっては仕方がない」
「ペロプス様のことは」
「どうしても」
「全く、馬鹿な奴だ」
見ればだ、タンタロスの手には棍棒がある。初老の顔にも服にも返り血が付いている。
「わしに逆らうとは」
「ネクタルとアンブロジアも頂き続け不死になっている、ですね」
「神にも等しい王に」
「そうだ、神に等しいわしが間違っていると言うとはな」
こう言うのだった。
「わしが誰と寝ようが構わぬであろう」
「どの相手でもですね」
「それが例え人の妻でも」
「息子や孫、甥の嫁実の娘や孫でも」
「姉妹であろうとも」
「わしは神に等しくなったのだ」
神々の宴に招かれそしてその酒や馳走を口にし不死になったからこそだ。
「そのわしに妻以外と寝るな、なぞと」
「許されぬこと」
「そう思われたからですね」
「ペロプス様に制裁を加えた」
「それだけのことですね」
「そうだ、わしに何かを言う者は許せぬ」
断じて、とだ。タンタロスは言うのだった。
「これからもどの様な相手とも寝る」
「しかしです」
家臣、もっと言えばタンタロスに媚び諂うだけの佞臣の一人が言った。彼の周りは何時しかそうした者達しかいなくなっていたが彼は気付いていない。
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