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第十五話

               第十五話   もう一枚
 美奈子の歌は落ち着いたものであった。流麗な中国語が聴こえてくる。
 それを静かに立って唄う。まるで賛美歌を唄う様に。
「何、この曲」
「いい曲だけれど」
 観客達は最初はその曲が何かわからなかった。だがその中の一人がポツリと言った。
「鴨子だ」
「鴨子!?」
「ああ、中国の流行歌だ」 
 それを知っている者がいたのである。
「いい曲だよ。けれどこれを唄うなんて」
 それがかなり驚きだったのだ。
「凄いわね、あの娘」
「そうなの」
「ええ、こりゃ思ったよりよ」
 その客は感嘆の言葉を述べていた。
「少なくとも普通の小学生じゃないわ」
「上手くいってるわよ」
 隣でサポートをする華奈子が声をかけてきた。
『そうね』
 だが美奈子は歌っている。それで魔法で語り掛けてきた。彼女は音を操る魔法だからそれが可能なのだ。
『今のところはね』
「随分慎重なのね」
『だって前のとは違う曲だから』
 美奈子はそれに応える。
『何もかもね』
「正反対だから」
『だからこそ選んだってこともあるのだけれど』
「そうなの」
『ええ』
 見れば美奈子の顔は真剣そのものであった。
『それに二曲共成功させないと意味がないから』
「だから集中してるのね」
『そう。だから華奈子もお願い』
 華奈子にも頼む。
『サポートをね』
「ええ、わかったわ」
 華奈子も真剣な顔になっていた。それに頷く。
「今度があたしが美奈子をよね」
『頼んだわ』
「任せて。この曲なら」
 華奈子は動き出した。といっても実際に動いたわけではない。
 コーラスに徹しているのだ。美奈子のそれに合わせて。地味だがかなり落ち着いてしっかりした調子で。
 唄う。それが美奈子を上手い具合に助けていた。
『有り難う』
 華奈子はもう唄に集中している。美奈子もまた。美奈子はその中でまた心に語り掛けてきたのであった。魔法を使って。
 歌が最後に近付いていく。観客達はもう一言も発さず聞いている。
 それが終わった時。静かな拍手が会場を包んだ。
「やったわね」
「ええ」
 まずは歌は終わった。後は。結果だけであった。


第十五話   完


                   2006・9・26


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