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二十七話:試練
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れは……ほら、細かいことを気にしてもしょうがないわよ」
(アタシ)が三人いるってことは(アタシ)の美声が三倍よ、三倍」
「こんなにありがたいものを独り占めにできるんだから、感謝しなさい」
『三倍案件は英雄王に持っていってください』

 聖杯の泥を相手にしても、我を保てる王であってもこれには耐えられないだろう。
 天の岩戸に引きこもった良妻狐ですら、1秒で引き籠りをやめて逃げ出すレベルである。

「なによー! (アタシ)だけだと不満だっていうの?」
『いや、もうお腹いっぱ―――』
「ふむ、強欲なものよ。だが、その強欲に答えてやるのも皇帝の役目よな」
「余達が来たのだ。万雷の拍手をもって迎えるがいいぞ」

 どこから聞こえてくる声に、現実逃避をしたくなりながら、ぐだ男は顔を上げる。
 真っ赤なバラが雨のように降り注ぐ中、彼女達は現れる。
 真紅の衣装を身にまとう、ネロ・クラウディウス。
 純白のドレスが眩しい、ネロ・ブライト。
 そう、我らが皇帝陛下のお出ましである。

「あら? あんたも増えてるの」
「うむ。理由などどうでもいいことだな」
「それよりもだ、喜ぶがいい。今日は余とそなたらで―――五重奏(クインテット)を行うのだ」


『やめろてめぇええッ!!』


 突きつけられた余りにも残酷な現実に、彼は悲痛な叫びをあげる。
 だが、いくら叫ぼうとも手を差し伸べてくれる神はいない。

【因みにさっき通過したヘラクレス君は、8回ほど蘇生していたよ】
『カリバーンよりも上…だと…?』

 大英雄ですら殺してみせる魔声に、今更ながらに戦慄する。
 一体どうやって、この試練を超えろというのか。

「先程は、あのヘラクレスに余の美声を聞いてもらえたからな」
「うむうむ。尊敬するヘラクレスに、感動で体を震わせながら賛辞を贈ってくれたことを余は一生忘れないぞ」
『バーサーカーは強いんだね……』

 体に異常なまでのダメージを受けながらも、紳士として対応したヘラクレスの強さに感動しながら、ぐだ男は考える。
 この試練を乗り越えるには何かで彼女達の気をそらす必要がある。
 その間に先に進む以外に道はない。彼女達には競技が終わってから謝ればいい。

『カリギュラさーん! 姪っ子のコンサートが始まりますよー!!』
「ウオオオオッ!」
「叔父上!? 先程も聞いていたではないか。今はこの者に―――」
「ネロォオオオッ!!」

 会場に来ていたカリギュラを、ネロ達の元に向かわせ足止めをする。
 次に、エリちゃんズを止めるために、似た者同士の彼女を呼ぶ。

『ニトリ様、来てください!』
「不敬ですね! 誰がお値段以上ですか! メジェド様にその心臓を捧げますよ!」


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