Side Story
少女怪盗と仮面の神父 33
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ハウィスに相談する」
「結果、箱に錠を付けたとしよう。鍵の置き場所は、ハウィスにも隠した。しかし翌日、鍵にも錠にも異変はなかったのに、やっぱり一粒減っていた。今度はどうする?」
(箱に異常はなく、自分以外には開閉できない筈なのに中身が減っていく。人為的に持ち出されてるの? なら)
「わざと目につきやすい場所へ置いて、一日中見張る」
「怪しいモノは確認できず、飴は減っていた。次は?」
「ハウィスに預けて様子を見る」
「もちろん、減る」
……本当に、何の話だ?
段々と苛々してきたんだが。
「ハウィスと相談して、錠を増やす。複雑な型で時間を稼いで、開くまでに犯人を捕まえれば良い」
「翌日、錠はすべて閉じられたまま。部屋を変えて、錠を増やし、眠らずに見張っていても、開いてみれば減っている飴」
「……っ、箱と飴を別々に隠す!」
「減る」
「錠を全部付け替えて、一日中脇に抱える!」
「国内製の錠は、どれも通用しないらしい」
「だったら国外製の錠……、を……」
「錠を?」
男性の鋭い瞳が、突然硬くなったミートリッテの表情を探る。
傍らのベルヘンス卿が、やっと肩の荷を下ろせたとばかりに息を吐いた。
(……傷一つ無い箱から、少しずつ減っていく高価な飴。施錠はできても、本来の役目が機能せず、意味を持たない錠と鍵。まさか、これ……)
「……それまで使ってた錠を全部、国外製の錠に、付け替える」
「そうか。では、使わなくなった国内製の錠と鍵はどうする?」
「使えない物は、全部……『棄てる』……」
(……ああ、やっぱり……)
己の言葉で足下がぐにゃりと歪み、苛立ちが自己嫌悪に取って代わる。
吐き気を抑えたくて口元を塞いでも、溢れ出した冷や汗は止まらない。
(こんな……まさか、こんな、こと……)
「理解したか。なら、答え合わせをしてやろう」
『もしも、棄てた錠や鍵が人間だったら?』
その道に生き甲斐と未来を望み望まれた者達が、突然国内外で役立たずの烙印を押されたら、彼らはその先を、どこで、どう、生きていけば良い?
そして、シャムロック。
「お前は、貴族達の屋敷で、どれだけの『傭兵』を目にしてきた?」
乾きかけた頬に再び、滴が零れ落ちる。
何故。
こんな基本的で簡単な『当たり前』に、今の今まで気付けなかったのか。
彼らはシャムロックに信号を送っていた。
生き|る《
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