Side Story
少女怪盗と仮面の神父 33
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気絶したそうだ。
私が拾った後も。本格的な治療はなかなか受け付けず。
辛うじて呼吸はするが……それだけ。
売春婦の自殺騒動から約三ヶ月後、ネアウィック村へ移り住んだ頃には、食べない飲まない、聴かない喋らない、寝返りすら打たない、ベッドの上の骨人形と化していた。
そう、当時を懐かしむでも悼むでもなく。
歴然とした事実として、淡々と語る男性。
ミートリッテはそろりと首を動かして、肩越しにハウィスを覗く。
彼女は、治療中のマーシャルに顔を向けつつ男性の話も聴いているのか、唇を噛み締め、肩を震わせている。
「どうして? ブルーローズは、実際に南方領民を助けてたんでしょう? その売春婦は、どうして自殺したんですか?」
しかも、後に英雄とまで称されるブルーローズの、ハウィスの目の前で。
売春婦の行動が、理解できない。
「それだ」
「え?」
なに? と見上げ直すと。
男性がため息混じりで右手を自らの腰、左手を額に当てた。
「お前達義賊は南方領の住民を職人層や一般民だけだと思っているだろ? だから件の売春婦は行き場を失い、若くして死に追い詰められたんだ」
「…………?」
アルスエルナ王国の場合、法律で禁止される以前に体を売っていた女性は元娼婦、以後の女性は売春婦と呼ばれ、蔑まれている。
しかし。
現代社会では罪人扱いの彼女達も、シャムロックから見れば一般民だ。
むしろ彼女達にこそ、農業や工業で生計を立てられる機会を与えて欲しいと思うのに……義賊の行為が、売春婦の居場所を失わせた?
「例えばの話、この世で一番大切な人間……お前ならハウィスか。そいつに『一粒で土地付きの家一軒が買える飴玉・百粒入りの箱』を貰ったとする」
「……はい?」
「箱自体も、世界に一つしかない物凄く貴重な品だ。お前は飴を一日一粒、寝る前に食べると決めて、箱ごと枕元に置いた」
(いや、ハウィスからの贈り物でも、そんな高級品は受け取れないって! 突然、何??)
「ところが翌夜に確認すると九十九粒ある筈の飴は九十八粒になっていた。何度数え直しても一粒足りない。その夜は食べるのを諦め、箱を閉じた。が、その翌日の夜改めて数え直すと、九十七粒……昨夜は食べてないのに、また一粒減っていた。更に翌日も、その翌々日も、何故か、一日に一粒ずつ減っていく飴。お前なら、これをどうする?」
「どうするって……箱に穴が空いてないかを調べる?」
「箱に不審な点や欠損は無く、飴が溶けて消えた可能性も零だ」
「じゃあ……紐で箱全体をぐるぐる巻きにしてみる、とか?」
「それでも飴が減ったら?」
「……置き場所を変える」
「それでも減ったら?」
「
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