Side Story
少女怪盗と仮面の神父 33
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ん!」
「「「!」」」
ハウィスとの七年間は『言われれば何処かで見たかも? でもやっぱり、いきなり出て来た知らない人』でしかない男性が入り込めるほど浅くはない。そういう意味で放った言葉に、何故か河岸に立つ(アーレスト以外)全員が驚きの表情を返した。
「ふーん? お前にとって『アルスエルナの王子に』命を助けられた事は、大して重要じゃないのか」
「当たり前でしょう? 今日まで私を育ててくれたのは貴方じゃない。ハウィスと村の人達です」
「だが。私がハウィスに預けなければ、お前は今頃野垂れ死んでいたか、良くて罪人牢の住人だった。それについてはどう思う?」
「どうって尋かれても……なら、貴方はどうして私をハウィスに預けたんですか? 私に感謝して欲しかったんですか? ありがとうございます、王子様ーって?」
突然現れた見知らぬ偉い人に、実はお前を救った恩人なんだよとか言われたって、そうだったんですね! ありがとうございます、お父様! な流れになるか?
普通に考えて無理だろう。
正直、へ? そうなの? としか思えない。
ハウィスが男性に対して何一つ言動を起こさないからというのもあるが、自分には彼に何かをしてもらった覚えが丸っきり無いのだ。
命を助けてやったぞ。だからどうだと尋かれても、答えに困る。
眉を寄せて首を傾ければ、ベルヘンス卿と顔を見合わせた男性が小さく笑った。
「想像してたより、良くも悪くも視野が狭いな。こいつ」
「丸二日間飲食抜きで寝動きした分の心身疲労もあるのでしょうが……そうでなければ後継者にはなりませんでしたよ。彼女がシャムロックを始めていた時点で、エルーラン殿下の完全勝利です。貴方は本当に碌でもない事ばかりをなさる。付き合わされる我々の苦労も少しは考慮してください」
返すベルヘンス卿の声色は、少しの呆れと諦めで満ちている。
「若い時分の苦労は買い貯めしといたほうがお得だぞ。狸ジジイと狐親父の鼻をへし折る頑強な武器を得られるし」
「我々にそんな物は必要ありません」
「無欲だなぁ」
「貴方に殺されたくないだけです」
「殺しゃしないさ。アルスエルナにとって価値がある内は、誰であろうと全力で護ってやる。ちゃんと知ってるだろ? ボナフィード=フルウム=ベルヘンス」
「……」
俯いて「護ってると言えるのか?」などとぼやくベルヘンス卿に構わず「とりあえず任せておけ」とミートリッテに向き直る男性。
「さて。まずは質問に答えようか。私がお前をハウィスに預けた理由は勿論、感謝を要求する為じゃない。こいつらがブルーローズだったってのは、もう判ってるだろ? だから、だ。お前がリアメルティへの侵領者で、ブルーローズが私の手札で、私が当時のリアメルティ領主だったから。死にかけてたハウィスを生
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