暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第240話 味方
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 玲奈の体に、僅かにだが冷気が通り抜けた。

 意識が、あの世界から、妖精の世界(ALO)浮遊城(アインクラッド)から、現実の世界へと戻された様だ。

 限りなく異世界に近いあの妖精の世界だが、やはり現実に戻ってみると、情報量のあらゆる面で、まだまだ劣っていて、再現しきれていない部分がある、と実感させられた。それこそが、『現実の世界へと戻ってきた』と言う想わせるのだ。
 そして、何よりも思うことがあった。

――……夢の世界から、厳しい世界へと戻ってきた。

 と言う思いである。
  
 今は無き旧アインクラッド(SAO)では、自分の、自分たちの生死を掛けて、戦い続けた。現実世界へと戻ろうと必死になっていたと言うのに、戻ってきた現実世界を思い知れば思い知るほど、今は、そうとしか思えなかったのだ。

「……ん」

 玲奈は、ゆっくりと目を開いた。
 戻ってくるタイミングに合わせて、室内温度や湿度設定を組み込んでいた為、目覚めた最初の感覚は兎も角、今は身体への不快感はとりあえずなかった。
 ゆっくりと、二度、三度と瞬きをした後、身体を起こし、時計を確認する。
 
「……17時、40分」

 ぽつりとつぶやくのは現在時刻。
 それを確認した後に、ほっと胸を撫で下ろした。

『本当に間に合って良かった』と思えたからだ。

 母に食事の時間である18時。その5分前までには席につく様に、ときつく言われている為だ。幼い頃から、少しでも粗相しただけで、手厳しく叱責を受けた、と言う記憶は今でも残っている。賑やかな食卓など、家庭の温もりなど記憶の中を幾ら探しても見つからない。……見つかる訳が無い。
 

――……誰かを想って作る料理はきっと美味しい。


 玲奈がそう強く思ったのは、幼き日によく姉の明日奈と共に祖母と祖父の家で、祖母の背中を、料理を作っているその背中を見ていたから。

 我が家で佐田が作ってくれる料理も勿論美味しい。……だけと、祖母の作る料理は また違った味がする。違う美味しさがある、と玲奈は思った。明日奈も同じだった。そんな疑問に、祖母は笑顔で答えてくれた。

『ふふふ。2人を想って、……2人の為に、愛情をたっぷりと込めてるからねぇ。伝わってくれたなら、嬉しいわ』

 はっきりと、笑顔で言ってくれた。

 その日から、玲奈は、明日奈も 料理の事を意識しだしたんだと思う。いつの日か、自分にも同じ様な料理を作ってみたい。笑顔を向けられたい、と思ったから。

 その夢は叶う事が出来た。料理の美味しさも、食卓を囲んで食べる温かさも、知る事が出来た。……でも、これから始まる食卓には、何の温もりも感じる事が出来ない。佐田が、皆の事を想い、作ってくれた料理、夕食に そんな
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