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渦巻く滄海 紅き空 【上】
百八 共闘
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を、ギタイは最後まで言い終えられなかった。背中に突然、凄まじい衝撃を受け、彼は身体をくの字に折った。
三つある内、比較的背に近いほうの顔が己の背後を確認する。其処には、宙に浮く鏡が一枚浮いていた。

その鏡から伸びた太刀はどう見ても、君麻呂の骨に他ならない。慌てて前方を見ると、君麻呂の前にも鏡が一枚浮遊していた。
彼が手にする骨の半分が鏡の中に呑まれており、残り半分の太刀の切っ先がギタイの背後の鏡から伸びている。

その鏡に向かって繰り出された君麻呂の骨の太刀が、ギタイの背後に浮かんでいる鏡に移動し、その背中を突き刺していたのだ。
「な…なんで、ありん…」

ギタイの全身を覆う岩の鎧。背後からの不意打ちにより、鎧はメキメキと音を立てて罅が入る。その隙を、君麻呂が逃がすはずが無かった。

「―――【鉄線花の舞・花】」

骨の太刀をそのまま巨大な骨の矛にする。既に太刀に貫かれているギタイの背中の中心に、更なる重く強烈な衝撃が迫る。
最硬化した骨の矛は、既に罅が入っていたギタイの岩の身体に亀裂を走らせ、その鎧を完全に打ち砕いた。

鏡を通しての強烈な一撃を受けたギタイの身体が吹っ飛ぶ。君麻呂の骨の太刀、否、矛を背に突き刺したまま、ギタイは上方から降ってくる大岩に激突した。君麻呂の骨を巻き込みながら、墜落してくる岩々に押し潰される。

致命的なダメージをその身に受けたギタイの巨体がそのまま谷底へ落下してゆく。それを尻目に、君麻呂は宙に浮かぶ岩を足場にして、跳躍した。同時に、二枚の鏡が掻き消える。

崖から張り出した岩に左手を伸ばした君麻呂は、左肩に力が入らない事実に困惑し、そこでやっと自分がまだ左肩の骨の生成をしていなかった事に気づいた。骨の生成をする余裕が無かったのだ。

力が入らずに出っ張った岩から手が滑り落ちる。再び空中に放り出された君麻呂の手を誰かがパシッと掴んだ。



「――これで、僕の失言は聞かなかったことにしてくださいよ」
「……一生憶えておくよ」


激しく口論した際、不用意に発せられた「――ナルトくんを殺そうとしていたくせに…ッ!!」という一言。その事をチャラにしてくれ、という白の申し出を君麻呂は一蹴した。

苦い表情を浮かべる白に手を引っ張られる。崖上に引っ張り上げられた君麻呂は、二枚の鏡を出現させた術者たる白を改めて見据えた。

「…べつに貴様の手助けなど無くても、あれくらい切り抜けられた」
「礼くらい言ったらどうですか?僕だってナルトくんに頼まれてなかったら、君の援護など向かいませんでしたよ」

白の呆れた声を背に受けながら、君麻呂は左肩の骨を生成する。新たに生成した骨の様子を確認しつつ、君麻呂は崖下を見下ろした。
谷底には川が流れていたが、其処にギタイの姿は無い。
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