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NARUTO日向ネジ短篇
【あなたのいない墓の前で】
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の形見のひとつだよ」

 姉さまが、右手に持っていたものを、わたしに差し出した。

ネジ兄さまの、額当て────

 そうだ、この額当ての下にはいつも、籠の鳥を意味する呪印が隠れていた。

兄さまは、死んでしまったから、額の呪印は消えたはずだ。

自分の運命を全うしたから、籠から解放されて自由になれた…?

だからこれで良かったなんてそんなの違う、そうじゃない。

運命とかじゃない。ヒナタ姉さまとナルトを守ったのは、ネジ兄さまの自由な意志なんだ。

守るべき仲間のために闘った、兄さまの────


「これは、ハナビが持っていて。ネジ兄さんの想いが宿った形見だから」

 姉さまから、兄さまの額当てを受け取った。

……これを額に着けたら、ネジ兄さまの想いが直接伝わってくるのかな。

ううん、もう分かってる。ちゃんと、伝わってるよ。


「───あ、鳥のさえずりが聴こえてきたよ。もうそろそろ、晴れる合図かな」

 ヒナタ姉さまがそう言うと、間もなく雨は上がってきた。

「……お? 向こうの空見ろよ! 虹が出てるってばよ」

 ナルトが声を上げた先に目を向けたら、雲間から差し込んだ日差しで、虹が現れていた。

これって、ネジ兄さまからの"おくりもの"かな。いつまでも自分のために、悲しまないでほしいって……


「ねぇナルト、もしあんたがヒナタ姉さまと結ばれてわたしの義兄になっても、"兄さま"なんて呼んでやらないからねっ」

「ん? あぁ、よく分かんねぇけど、分かったってばよ!」

「は、ハナビったら、もう…!」

 
 ネジ兄さまが命を懸けてまで守ってくれた二人だもん、今度はわたしが守っていくよ。


虹に向かって、心の内でそう誓い、わたしは兄さまの額当てをぎゅっと握りしめた。





《終》



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