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真田十勇士
巻ノ六十三 天下統一その十一

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「武士として、男としてな」
「それは買い被りであろう」
「わしはそうは思っておらぬ、若しそうなればな」
 その時はというのだ、石田が恥を忘れたその時は。
「容赦はせぬ」
「斬るか、わしを」
「思いきり殴ってやる」 
 微笑んでだ、石田にこう告げた。
「その顔が変わる位にな」
「そうして止めるか」
「その時は覚悟せよ」
「わかった、ではな」
「うむ、今宵は好きにせよ」
「そうさせてもらう」
 二人で話してだ、石田は大谷の助けを受け左近とも合流しそのうえで兵を収め小田原に向けて退きにかかった、そして。
 増田は信之と幸村の兄弟と彼等の兵達を入れ石田の軍勢と合流にかかった、その時にだ。
 幸村から甲斐姫との一騎打ちの話を聞いてだ、唸って言った。
「見事じゃ」
「そう言ってくれますか」
「うむ、あの甲斐姫と一騎打ちをしてじゃ」
 そしてというのだ。
「分けるとはな」
「勝ちたかったですが」
「甲斐姫の強さは巴御前や板額と肩を並べるという」
 増田はかつての女猛者達の名を出した。
「それではじゃ」
「勝つことはですか」
「むしろ分けることがな」
「その方がですか」
「凄い」 
 そうだというのだ。
「源次郎殿こそ見事」
「そうであればいいのですが」
「このこと関白様に申し上げておく」
 幸村の武勲として、というのだ。
「必ずやよきことになろう」
「有り難きこと」
「して源三郎殿も見事であられた」 
 幸村は信之にも労いの言葉をかけた。
「一晩よく本陣を守られた」
「風魔の者達からですか」
「よくやってくれた」
 まさにと言うのだった。
「お陰で我等は無事に戦えた」
「攻め落とせませんでしたが」
「いや、あの城を一晩で落とすことは無理であった」
「では」
「もう少し時があればわからなかった」
 そうだったというのだ。
「だからこそ」
「それでは」
「うむ、貴殿も見事だった」
 信之の戦いぶりもというのだ。
「だからな」
「それがしの戦ぶりもですか」
「関白様にお伝えする、共に功績は互角」
 そうだったというのだ。
「関白様に申し上げておこう」
「左様ですか」
「そう言って頂けますか」
「そうじゃ、そのことを申し上げておく」
 では、とだ。こう言ってだった。
 増田は石田達と共に小田原まで兵を退けさせた、その夜は石田は兵達に宴を行わせ酒を出し好きなだけ飲ませた。
 だが自身は静かに過ごしていた、大谷はその彼に問うた。
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