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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆ラストバトル
第六十五話 狂気
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は分かっていた。やるべきことは全てやった、もうできることなんてないのに、と。

 彼は自らの死が不可避だと認識したあと、自らの短い生涯を振り返っていた。彼の人生は短いながらも、常人に比べはるかに多くの経験を積んできたことは確かだった。彼は葵の命を救ったことや、SAOでシリカと出会ったことを人生の中で最も素晴らしい一幕だったと考えた。そう、このような状況で死ぬことになろうとも、自分はシリカと出会えたのだから、SAOに入って良かったと胸を張って言える……

 ――しかしマルバの思考は、当の本人であるシリカによって遮られた。
 短剣を構え、まっすぐに駆け込んでゆく。敵が強攻撃の後に硬直した隙を狙って弱い一撃を加え、そしてすぐに離脱し、次の機会を伺う。マルバが過去に彼女に教えた強敵に対する戦法の一つを、彼女はいままさに実践しているところだった。
 彼女は強かった。敵は強い、しかし味方は殆ど倒れてしまったという窮地の中で、まだあの強敵に立ち向かうだけの精神力を持っている。彼女らしいな、とマルバは思った。つい先程、ミドリたちを少しばかり軽蔑したことを恥じた。現実を認識することを拒み、ただ自分のやれることを、誰かのためにやりたいことを追求する生き方を、尊敬していたことを思い出したからだ。彼女を人生の目標と定めた彼にとって、彼女のような強い精神力を持つことは永遠にできないような気がした。何故なら、彼はすでにやれることをすべてやりつくし、ただ死を待っているだけなのだ……

 ……そんなのは、嫌だ。
 彼は顔を上げた。今、シリカは自分の手で変えようのない未来を変えようと努力している。それはマルバにもできることではないか?
 クールに現実を見据え、無駄なことは何もしない、そういう生き方を彼は目指していたのか? 否だ! 彼が目指すのは、シリカのような、自分を強く持つ精神的強さだ。
 それならば……現実を見ることなど放棄しろ! ただ泥臭く、目の前の現実を変えようと努力しろ! それが、彼の目指す道ではなかったか!

 マルバは姿勢を低くして、必死で戦うシリカの元へと突っ込んでいった。自らの運命への反抗の証として、床に転がった短剣を拾い上げながら。
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