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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆ラストバトル
第六十四話 会敵
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何か』に怯え、慎重に戦いを続けていた。

 “何か”が起こるとしたら、それはきっとHPが五割を割った時ではないか――アスナはそう考え、ブロック隊のHPを九割以上保ちながら戦うよう、指示を出していた。
「五割、切ります! みんな気をつけて!」
 アスナの声に、ブロック隊の面々が二歩下がり、盾を構えた。ダメージディーラーはブロック隊の後ろに下がり、武器を構えて攻撃に備える。

 果たして――“何か”が起ころうとしていた。巨大なフーデットマントの姿のラスボス、“The Hollow Avater”が、空っぽの両腕を天に掲げたのだ。
 その瞬間、その場の全員が“イヤな予感”を感じた。身体が勝手に動き、ボスから更に一歩下がる。強い生命の危機の感覚に、逃走態勢に入ろうとする。しかし逃げる訳にはいかない彼らは、自分の身体を精神力で制御し、ボスに向き直った。この戦い、勝って帰る――その強い希望を胸に抱いて。

 その希望が、一瞬ののちに絶望に取って替えられるとも知らずに。

 ボスモンスターの固有名称、“The Hollow Avater”の表示が変わろうとしていた。アルファベットが次々と入れ替わり、書き変わり、より長い一つの文字列を形成しようとしていた。それと共にボスの姿が次第に変化してゆく。フーデットマントの内側のあちらこちらがごつごつと隆起して、その姿がどんどん大きくなってゆく。やがて天井近くまで肥大化したそのモンスターは、フーデットマントを引きちぎった。

 カランカラン、と乾いた音が立て続けに響いた。その場の誰もが声を発することもできず、凍りついた。更に何人かの手から武器が滑り落ち、床に転がった。誰も拾おうとすらしなかった。

 その巨体は、その場の全員が戦意を喪失するのに十分なほどにおぞましい外見を持っていた。軟体動物のような吸盤状の突起が多数生えた腕を見ただけで普通の人は胃の中の物を全て吐き出すだろうし、またカビのように地面に同化しずるずると這いまわるその脚を見ただけで普通の人は気を失うだろう。何よりもひどいのはその顔面である。タツノオトシゴに似た形状をし、フジツボらしきものがびっしりと張り付いているかのようであり、妙にヌメヌメと光っているその姿は、普通の人ならば一目見ただけで正気を失い、自殺を図るはずだ。
 その場にいるのはみな強い精神力を持つ歴戦の戦士たちであったため、膝をついたり、ただ立ち尽くしている程度の人が多く、気絶するものは半数程度にとどまった。しかし、巨体がその両腕を振るい、そのたびに一人づつ命の灯火が吹き消されていくというのに、誰もなにもできなかった。何をしても勝てない相手だと、本能的に悟ってしまったからだ。外見上のまやかしに囚われて、正常な判断を完全に奪われ、ただ絶望して死を受け入れていた。

 ――いつの
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