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魔術師にとって不利な世界で、俺は魔法を使い続ける
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、クロト」
 やや疲れた顔をしながら、隣の部屋からアリスが戻ってきた。間髪入れず、椅子にさえ座らせずゼロの叱咤が飛ぶ。
「護符を用意しろ。転移と回復、解毒のやつ。大量に」
 そんな言葉など意に介さず椅子へと腰かけたアリスが怪訝そうな顔でまじまじとゼロを見る。
「なんだい、もう次のボスかい?情報が速いねえ。あたしはもう少しゆっくり攻略したいんだけどねえ」
《護符》というカテゴリに属するアイテムは、その名の通り紙やら布やらでできた、薄っぺらいにも関わらず戦闘用のアイテムで、外見の頼りなさとは大違いな、非常に優秀な効果を持っている。簡単に言ってしまえば「同じような効果を持つアイテムの中で、最も効力の高いアイテム」という事になる。『体力を回復する効果』を持つアイテムに例えるなら、『体力の最大値の3割を回復』する《ヒールポーション》や、『一定時間自然治癒力を上げ、体力を完全回復』する《ヒールポーション・ハイ》などが主な回復アイテムだ。しかし緑色の《回復の護符》を使用すれば、『一瞬で体力を完全回復し、一定時間自然治癒力を上げる』、いわゆる複合効果を得る事が出来る。他にも『出血毒、麻痺毒、催眠毒を回復する』黄色の《解毒の護符》や、『指定した場所にタイムラグなしに転移する』紫色の《転移の護符》などがある。ちなみに、基本的にゼロ《転移の護符》を必要としない。
 但し、数少ない流浪人タイプのNPCとの売買か、高レベルモンスターからの確立ドロップしか入手手段がない事がネックになる。流浪人は各地を渡り歩くために今どこの大陸をほっつき歩いているか知る手段がなく、ドロップを狙うには安全のため「護符を獲得するのに護符が欲しい」状況になる。
 その問題を解決し、安定供給を可能にしたのが、アリスのスキル《錬金術》だ。本物の錬金術らしく物を増やす、あるいは作り出す事も出来るが、本人はもっぱら護符を作る事にしか使っていない。しかし腹黒いアリスのこと、無論タダで提供するはずもなく、商人よりほんの少し安いだけの料金をふんだくる。実際紙か布と多少のMPしか使わないためにコストは0に等しいが、その稼ぎあってこの屋敷が存在するため、俺は何も言う事ができない。
 特にボス攻略が近づくと、アリスの収入は莫大に増加する。普段から買いに来る者が多いこの店だが、大規模戦闘が行われるためにかなりの数の護符が出回る事になるからだ。
 5秒ほどゼロの氷のような視線を平気で受け流し、ようやく一仕事するかという風に立ち上がったアリスだが、
「クロト。先にあっちで待たせてるヤツと話をつけてこい。それまで絶対退いてはくれないだろうからね、あれは」
 そう言い残して即、また座った。これにはゼロも諦めの姿勢にならざるを得ない。とっとと行け、と顔に書いてある。
「分かったよ」
 そう言い残し、椅子と同じく漆黒
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