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魔術師にとって不利な世界で、俺は魔法を使い続ける
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が、一日中ぶっ続けで戦闘をこなした体に、かなりの長さはあるが所詮棒きれ一つ、大した呪縛ではない。一言「そんなワケはない」と返し、朝食を食べながらすっかり染み付いた動作でメニュー画面を呼び出し、「戦闘用魔法具」の覧から武装を外す。
 数秒後、メニュー画面を閉じたと同時に飯を食べ終わる。
 と、もうとっくに食事を完了させていたアリスの表の顔としての職場、この住居兼店舗の屋敷で経営する店のベルが、隣の部屋で鳴った。
 この世界では食事後の後片付けは必要ない(皿などは消耗品扱いの為、乗っている物が無くなればほぼ時間を経てずに消える)ため、即刻店であり玄関である1つ西の部屋へと向かうアリスを見送りながら、俺は自前のコーヒーを淹れる。リアルとは違い即出来上がった漆黒の飲料を飲みながら、俺は今日の予定を立てる。
 と、俺は思わず座っていた黒めの木材――恐らくはリアルで言う「黒杉」――でできた椅子から飛び退いた。
「誰だ!?」
 人の気配を感じた。この部屋は屋敷の中でも最も北西に位置していて、入るには先程アリスが出て行ったドアを通過するしかない。しかし、ドアを含む俺の視界内の物は全く動いていないし、木製のドアに顕著な小さな軋み音もしなかった。
 俺はすぐさま杖を構え、臨戦態勢に入ろうとする。しかし、先程武器をしまったのに気付いて大焦りし、続いて薄暗いながらも――アリスの趣味か、この建物内部は全体的に照明が暗めにカスタムされている――ここは街区である事に気付く。
 と、視界の右隅、部屋の最も明かりの絞られた暗がりに、一人の人影が現れた。余りにも自然な登場で、そこに初めから居たかのように。
「よ」
 このゲームの開始以来の腐れ縁、最も古くからの戦友である猫背の少年は、短い挨拶と共に訪れた。


「なんで一々気配を消して来るんだ、お前は」
 ユグドラシル攻略メンバー一の暗殺者、ゼロに紅茶を淹れ――意外にもゼロは苦い者が苦手らしい――、つい苦笑顔になりながら若干の(というよりほぼ100%)皮肉を含ませて要件を聞く。これでも伝えたい事は伝わるため、説明は含ませない。
「この区のボス情報が入ったからな。それを伝えに。ついでにクロト、お前の危機管理能力も見に来た」
 ゼロは序盤も序盤、ノルド・タウンで俺と共に実力を付けた後、血の気だらけの最前線で戦う俺とは別の道を進み、裏で活躍する暗躍者となった。
 この世界、情報に支配された電子の牢獄から脱出するためには、この大陸、10キロ四方の大地が100繋がった地を全て制覇するしかない。しかし、そのためには攻略を進めモンスターを撃破する者だけでなく、そのバックアップをする者、様々な戦闘支援を行う者など、様々なスキルを持ったプレイヤー(このゲームはスキル性重視の節がある)が必要である。つまりスキルをバランスよく振り分
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