111話 涙
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ら掻き抱かれてびっくりした。ククールだよ、クールなククールだよ?いつも隣にいて不快感のない距離を保ってくれるような人が。……いつもサラサラのククールの髪の毛、血でベタベタだ。
だんだん思い出してきた。目の前でメディさんが刺されたところで記憶が終わってる。ククールがやられた私の代わりに反撃してくれてた気もするけど……。
「ねぇ、メディさんは。私は助かったんだよね……刺されても」
「……駄目だったよ」
「そう……」
また守れなかったんだ。私、弱いなぁ。生き残れたのは嬉しいけど……こんな生き延び方って。
ううん、ククールが泣いてる。顔は見えないけど、この距離ならわかるさ。優しいククール……大切な仲間で友達。友達の死なんて嫌に決まってる。生き延びれて良かった。
「ベホマでも目を覚まさなかったから不思議な泉の水を飲ませたんだよ、トウカ。こんなこと言いたくないけど……今は自分のことを考えた方がいいよ」
「え?もう元気だよ?」
「さっきまでどれだけ真っ青だったと思ってるんだ!いいから休んでて!また居場所がわからなくなったんだからどっちにしろ動けないんだから!」
そう言ってエルトはククールをばりっと引き剥がした。……美形は顔がくしゃくしゃでも様になるんだね。びっくりするぐらいボロ泣きのククールにゼシカがハンカチを差し出し、ヤンガスの男泣きに私はハンカチを探して……装備がまるっと剥かれていることに気づく。
誰のかわからない、ていうかゼシカでしかありえないんだけど、見知ったワンピース姿だった。ゼシカの普段着だ……む、胸のあたりだぼだぼなんだけど。ねぇ、ちょっと、着替えさせて……。
「とりあえず宿だよ、アスカンタでも行けばいいでしょ?嬉し泣きも後悔も着替えも後、もう誰かを失うなんてごめんだよ!」
見たこともないくらい目を釣り上げたエルトが私に肩を貸してくれた。もうひとりで平気、体調万全、いつだって戦地に戻れるのに。でもおとなしく今は借りた。
・・・・
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