111話 涙
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腹に子供がいるのに手を出すわけがないだろう。わざわざ契約まで結んだんだからそこを疑ってもらっちゃ困る」
今のアーノルドと寸分違わぬ姿の彼と、大人になったらしいラプソーン。それからアーノルドに庇われた、緑色の瞳が印象的な女性。……そういえばさっきから気になってたんだけど。二人とそこの女性以外……モノクロの世界だ。回想を見てるからなのかな?セピアっぽいけど、色はないんだ。
「息子かな?娘かな?産まれたら見せにおいで。アーノルドによく似た子供だといい」
「……今にも妻を殺しそうなやつに見せたくはない」
「妻?……お前、ほんと異端者だよなぁ。人間好きのアーノルド、いつ絆されたんだ?」
「さぁな。もう俺は人間狩りなんてしないし、わざわざお前とあちこち燃やそうとも思えないだけだ。ほら、魔神継承の儀式はすぐだろ?さっさとみんなに姿を見せてこい。俺はただの魔族で、お前は神になるんだ……昔なんて引きずるなよ……」
ラプソーンが口を開く前に場面がまたぼやける。
「アーノルド、お前の子供は殺せない」
「お前は俺と並ぶ権利がある」
「ならば子を連れて俺の元に来るしかないだろう?」
「逃げないで」
「俺とともに過ごしたのはお前だけなんだから」
だんだん人間味がなくなっていく声だけが耳元に響いていて……。
それを断ち切ろうとするのか、守ってくれるようにぎゅっと抱きしめられる。
「やっぱりそうだ、エイリーンを殺したのはお前じゃないか!娘を連れてこいだと?いい加減にしろ、お前とはもう……もう……ッ」
叫び声が遠く聞こえる。いつの間にか体温は離れていて、くしゃりと頭をなでられる感覚を最後に風だけが私の体を駆け抜けていく。
ねぇ、なんでじゃあ……私を捨てたの?要らないわけじゃなかったんだよね?
そうだ、天下無敵の花言葉の名前をくれたのは貴方なの?ねぇ、それくらい教えてくれたっていいじゃない。
意識は周りの闇に溶けていく。溶けて、溶けて、混ざり合うみたい。
・・・・
「ゲホッ……気管に……ッ、ゲホッ」
「トウカ!」
なんだろう、なんか夢を見てたような。ただ寝てただけのような。突然流し込まれた水に盛大に咳き込みながら飛び起きると目の前にはみんなが。なんでそんなに心配そうなの?元気いっぱいだよ?
「……なんか心配でもかけた?」
「心配どころじゃないよ!トウカ、あの杖に刺されて死にそうだったんだからね?!」
「へ……?」
杖……?刺されて……?エルトは何を言ってるの。ピンピンしてるじゃないか。杖に刺されたら死ぬでしょ。生き返れなくなるって何人も見てきたじゃない。
「トウカ……良かった……」
「ククール、なんで泣いて……」
ガバッと正面か
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