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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十一話 ワイングラス
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、伯を拘束など……。それほどまでに彼が邪魔なのですか」
「男爵夫人」
今度はフィッツシモンズ中佐が私を咎めた。でも退けなかった。

ラインハルトを庇うのが危険だとはわかっている。それでも私は心の何処かでこの人ならラインハルトを使いこなせるのではないかと思っていた。難しい事だと思う、ラインハルトは他者に屈するような人間ではない、それでもこの人なら……。

「邪魔?」
司令長官は何を言われたか分からないかのように私を見た。そしてクスクスと最後には声を上げて笑い出した。そして笑いを止めると詰まらなさそうに言葉を出した。

「男爵夫人、ローエングラム伯は覇者なのです。覇者は何者にも膝を屈したりしない。私が彼を邪魔だと思ったんじゃない、彼が私を邪魔だと思ったんです。キルヒアイス准将はその思いを汲み取ったに過ぎない、忠実にね」
「……」

ローエングラム伯は覇者、司令長官の言葉が耳に残った。
『私は、頂点に立ちたいんです』
『でも、私の前にはいつもあの男が居る、あの男が……』

ラインハルトの声が聞こえる。あれは何時の事だっただろう。確かシャンタウ星域会戦の後だった。私の想いなど所詮叶うはずの無い馬鹿げた願いだったのだろうか……。

いつの間にか追憶に耽っていた私を司令長官の声が呼び戻した。
「男爵夫人、この件に関して不満を持つなとは言いません、しかし不満を表に出すのは止めてください。これは帝国の総意なのです、貴女のためにならない」
「総意?」

司令長官が私を気遣ってくれているのは分かる。しかし、総意? 総意とは何の事だろう。司令長官は視線を私に向けた、何処か哀れむような視線だ。

「リヒテンラーデ侯、エーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥、そして……私。私達の間でローエングラム伯は帝国の不安定要因でした。今回の内乱でも多くの人間が彼を利用しようとしている」
「……」

「帝国はこれからフェザーン、自由惑星同盟を下し銀河を統一します。そのためには帝国内の不安定要因をそのままにする事は出来ません」
「……」

「門閥貴族もローエングラム伯も帝国の不安定要因である以上排除する、そのために罠を仕掛けました」
「ではジークを罠にかけたのはやはり……」

私の言葉に司令長官は頷いた。
「ええ、真の狙いはローエングラム伯の排除です。キルヒアイス准将だけを排除しても何の意味もありませんからね。リヒテンラーデ侯、エーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥もこの件に関与しています」
「!」

溜息が出る思いだった。隣に居るフィッツシモンズ中佐が息を呑むのが分かった。ラインハルトが宇宙艦隊内部で微妙な立場にある事は知っていた。しかし宇宙艦隊内部だけの問題ではなかったという事か……。

私が美しいと思った野心的で覇気
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