巻ノ六十三 天下統一その一
[8]前話 [2]次話
巻ノ六十三 天下統一
秀吉は本陣で氏政と氏直の使者がそれぞれ来たとの報を受けた、するとすぐにだった。
彼は確かな顔でだ、こう答えた。
「では新九郎殿とな」
「先にですな」
「会おうぞ」
氏直の使者からというのだ。
「そうしようぞ」
「関白様、新九郎殿は」
家康はすぐにだ、秀吉に申し出た。
「この度の戦については」
「わかっておる、新九郎殿はな」
秀吉も家康に穏やかな声で答えた。
「この戦には反対であった」
「ですから」
「それはこれから話す」
こう家康に答えた。
「徳川殿の悪い様にはせぬ」
「お願い申す」
「ではな」
家康に穏やかな顔で応えてだった、そのうえで。
秀吉は氏直の使者と会った、そして使者から氏直の言葉を聞いた。秀吉は使者が話を終えると彼にすぐに問うた。
「では新九郎殿はご自身がか」
「はい、腹を切られ」
そしてというのだ。
「それを全ての責とされ」
「他の者の赦免を願っておられるのじゃな」
「左様です」
「見事なお心であるな」
ここまで聞いてだ、秀吉は使者に微笑んで言った。
そして己をじっと見ている家康を目だけで一瞥してだった、使者に答えたのだった。
「では新九郎殿への裁きを言い渡す」
「はい」
「ご自身の命と共に全ての者の赦免を願い出る心見事である」
こう使者に言った。
「その心に免じ切腹は命じぬ」
「そうして頂けるのですか」
「少し寺に入られよ」
出家をせよというのだ。
「その様にな」
「出家ですか」
「うむ」
穏やかな声のままだ、秀吉は使者に答えた。
「一年か二年な、いいという時になったらわしが言おう」
出家を解くというのだ。
「そうされる様にな」
「有り難きお裁き、では」
「約束しよう、新九郎殿には断じて重き裁きは下さぬ」
今言った通りだというのだ。
「その様にな」
「では」
「その様にな」
こうしてだった、氏直への裁きを使者に告げて去らせた。この後すぐに氏政の使者と会うことになっていたが。
秀吉は家康にだ、氏政についてはこう言ったのだった。
「新九郎殿はこれでよいが」
「はい、それでもですか」
「この度の戦の責は取らねばならぬ」
「それならば」
「うむ、だからな」
「北条殿については」
氏政にはとだ、家康も言った。
「やはり」
「うむ、そうするしかない」
「そうなりますか」
「そしてじゃ」
秀吉は家康にさらに言った。
「裏切り者を放っておく訳にもいかぬ」
「内通を申し出た松田殿、大道寺殿も」
「この二人にも切腹を命じる」
こう家康に言った。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ