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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十話 仮面の微笑
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いますリューネブルク中将」

「伯爵夫人が准将を唆走した、そう思うでしょうな。今回の一連の陰謀の裏には伯爵夫人がいる……」
「アンネローゼ様は関係ない! あの方を巻き込むな!」

キルヒアイスが身を乗り出し、椅子から転げ落ちそうになる。襟首をつかんで椅子に引き戻したが、キルヒアイスは身を捩って暴れ続けた。そんな様子を司令長官は笑みを浮かべながら見ている。

「伯爵夫人が関係無い事、そんな事は分かっています。ですが、それを決めるのは卿ではない。分かりますか、その意味が?」
「卑怯な……。卑怯でしょう! 司令長官!」

卑怯、その言葉に司令長官が微かに苦笑した。気持ちはわかる、暗殺をしようとしていながら卑怯などと何を考えているのか。同じ思いだったのだろう、シューマッハ准将が冷たく言い捨てた。

「卑怯? 自分がしようとしたことを考えるのだな。卿にその言葉を使う資格があると思うのか?」
「……しかし」

「キルヒアイス准将、謀略に卑怯などという言葉は有りません。謀られるほうが間抜けなだけです。卑怯と罵られるのは最高の褒め言葉ですよ。それだけ相手を悔しがらせたという事ですからね」
「……」
キルヒアイスは唇を噛み締めたまま、じっと司令長官を睨んでいる。

「伯爵夫人を助けたければ正直に全てを話すことです」
「……そうすれば、助けられると」
「あの方が陰謀に関わっていない事は事実でしょう。それを証明できるのは准将しかいません。だから正直に話せと言っています」
「……」

「内務省の人間達は少しでも自分の罪を軽くしようと必死のはずです。当然誰かに自分の罪を擦り付けようとする。伯爵夫人は良い標的でしょう」
「……」

「准将が全てを正直に話せば、伯爵夫人に対する援護になるでしょう。しかし、一つでも嘘を吐けば伯爵夫人に対する証言も信憑性は低下する。分かりますか、私の言っている事が」

「……ラインハルト様は、ローエングラム伯はどうなります。ローエングラム伯も今回の一件には関与していません」
キルヒアイスが縋るような視線を司令長官に向けた。愚かな、伯爵夫人と伯では立場が違う。その程度の事も分からないのか、いや分かっていても縋らざるを得ないのか、哀れな……。

「ローエングラム伯には死んでもらう事になります」
「ですが、ラインハルト様は……」
「誰のために、何のために私を殺そうとしたのです、キルヒアイス准将」
「……」

「これは戦争だったんです。私と卿、そしてオーベルシュタイン准将の。卿らはローエングラム伯を中心とした帝国を作ろうとした。私は卿らとは違う帝国を目指した。帝国は一つ、敗れたものは消えるしかない……」

何処か自分に言い聞かせるような口調だった。司令長官は何処かでローエングラム伯を殺した
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