第11話『異端の烙印〜ガヌロンからの招待状』
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雷禍の閃姫と銀閃の風姫の確執が蘇ってきた。それは1年前というまだ色あせていない時間帯だ。
もしかしたら、凱の「不殺」がエレンの心に何かをひっかけたのかもしれない。
「みんな。とにかくこのことはティグル達に黙っていてくれ」
「どうして……どうしてなんですか?」
ティッタが重々しく、そして、悲哀調の口どりで凱に問いた。
「叛逆ならまだしも……異端はまずい。もう一度言うが、少しでも俺を庇いたてしようとすれば、その人達にも嫌疑がかけられる」
「そんな!」
こんなこと、誰しもが納得できるものではない。
アルサスを護る為に最も尽力してくれたのは、この人ではないか。
何の対価もなく、「助けて」という声に応える為に、秘めたる力を振るい続けてきたではないか。
「だからこそ、俺はおとなしく捕まる」
そして、約束の期日より前の日に、ティグル達が帰還する前よりも、凱の身柄を引き受けるグレアスト侯爵がアルサスへやってきた。
『明朝・セレスタの町・中央広場』
「すごい……ユナヴィールの村の人たちまで来ています」
複雑な感情を込めて、ティッタはつぶやいた。きっと、凱の異端認定の事を聞きつけてきたのだろう。ガヌロンの傘下であるグレアスト直々のお出迎えだ。凱を捕える為に来たと思っているはずだ。今回グレアスト侯爵は、ガヌロン公爵の名代として足を運んできたのだ。
そして、集まった村の人達がざわめいていく。
「そ、そんなことない!ガイさんが異端だなんて!」
「でも……王宮の人がそう叫んでいたって……」
「王宮?どうして?」
「ガイさんの教導は神の教えに背くっていったべ」
「だって、ガイさんがいなかったら、子供達はどうするんだったんだ?」
子供が「何もしない」という時間。意味もなく時間を空費することは、誰しも耐え難いことである。
「それに、ガイさんがいなかったら、テナルディエの奴らにうちの孫は殺されていたんだべ」
次々と、――凱がいなかった場合の、アルサスの未来――を告げる。
それらは、ありえた事実だったかもしれないし、ありえた場合でもあった。
「すごい人の集まりですな。あれは」
豆鉄砲を喰らったような顔で、ルーリックは言った。
「ガイ殿はあんなに慕われていたんだな」
オージェが言った。そしてティッタがふいにつぶやく。
「……私とガイさんがユナヴィールの村を歩いていると、笑顔で話しかけてくれるんです」
それは、こんなにも野菜が取れたよと――
それは、この畑はこんなにも作物の育ちがいいと――
それで、ジャガイモをくれたり、トマトをくれたり――
その日から、少しだけ、食卓が暖かく感じるようになりました。
そ
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