第11話『異端の烙印〜ガヌロンからの招待状』
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ドワン宰相。この両者の名が異端勧告書にあるという事は、一体どういうことか?」
人当たりのよさそうな老人の質問に、青年は厳しい語調で回答する。
「ええ。ブリューヌは「国王陛下の領地を臣民に貸し与える」封建制度でしたね」
オージェ子爵はコクリとうなずく。マスハス卿も、オージェ子爵も、ティグルヴルムド卿も、王に忠誠を誓う代わりに、領土を貸し貰い受けたのだ。現在、マスハス卿はティグルの申告状を王都へ届けている最中だ。今頃、きっと王都ニースへ入城を果たしているはず。
「その制度の極端な出来事が目に見える形で現れた……という事です」
意味深い凱の推測に、オージェは首を傾げた。
「どういうことか?」
「王都とて勢力が乱立する状況は好ましくありません。ティグルヴルムド卿も今ではテナルディエ公爵、ガヌロン公爵に続く国内の第三勢力です。貸し与えた領土、自治権を認められて勢力を強めていった結果。極端な例を挙げれば、テナルディエ公爵家とガヌロン公爵家がそうです」
要するに、ブリューヌの双璧以外の勢力、自立を強めつつあるアルサスが邪魔になりそうなので、芽が出る前に種を取り除こうという魂胆だ。
「それとティグル……ティグルヴルムド卿も叛逆者としての罪に問われるのも時間の問題です」
アルサスを護る為とはいえ、ティグルは自領をジスタートに売り渡した叛逆者となる。以前、凱がティッタに伝えたことだ。
叛乱を起こすかもしれない。ジスタートが侵略者となるかもしれない。いずれの可能性を鑑みて、王国直属の討伐軍がやってくる。
ティッタが、思い詰めた顔でうつ伏せる。
――ティグル様が……叛逆者?――
――ガイさんが……異端者?――
どうして?
どうして……みんなの為に頑張っている人たちが、このような目に合わなければならないの?
「ティッタ?」
凱が心配そうに、自分と同じ栗色の髪の少女に声をかける。
「……ごめんなさい、ガイさん。こんなことになるなんて……」
「ティッタは何も悪くない。悪いのは、こうなることを分かっていながら、推し進めてしまった俺自身なんだ」
同じ栗色をした髪を持つ青年と少女は、対照的な表情で窓を見上げた。
凱は自身への苛立ちで顔をしかめて――
ティッタは凱に何も力になれない自分自身へのふがいなさで表情を暗くして――
「俺の事なら心配いらないさ。異端審問の護送隊が俺の身柄を確保してアルサスを出たら、適当なところ……何かの騒動と出くわすことが出来れば、いざこざに紛れて脱出できる。そうなれば責任はあいつらにあるしな」
単なる脱出では、異端元のアルサスを見せしめにする可能性がある。そうならないためにも、凱は土佐草に脱出の最高の機会をうかがうつもりなのだ
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