第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#12
決意の誓戦 “運命” VS 『運命』 〜PHANTOM BLOOD NIGTMAREX〜
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おおせる筈もなく、車のバンパーがスカートに接触した。
大したスピードではなかったが相対する質量が違う為、
少女の躰は軽々と宙を舞いアスファルトの上に転がる。
本来なら腰骨が再生不能なまでに砕けている所だが、
操縦するドライバーが直前にブレーキを踏み衝撃を和らげた。
慈悲ではない、コレは、アメリカのスラム街で実際に行われていた
殺人ゲームのやり口。
弱者を一方的に車で追い回し、徹底的に甚振り玩び尊厳を破壊する
最悪の “人間狩り” だ
「あ……ああぁぁ……!」
真新しい白い制服を血と土埃で汚された姿で、
吉田は路上に座り込んだまま後ずさりした。
しかしすぐ壁につかえそれ以上の後退は不可能となる。
眼前、超至近距離で硬質な車のフォルムが無機質に自分の泣き顔を映している。
(誰、か……誰か……助、けて……)
絶望に包まれた表情で、吉田は力無く小首を振る。
最早完全に心が折れてしまって、立ち上がる気力はない。
(空条君……エリザベスさん……)
最初に浮かんだのは、頼る事の出来る者、
しかし安っぽいファンタジー小説のように、
窮地の時に望んだ者が都合良く現れて救ってくれる事など、決してない。
(お父さん……お母さん……健……)
次に浮かぶのは、家族の事。
コレが死の際に視る生涯の追想だという事を、
果たして少女が認識していたか否か。
(真竹ちゃん……池君……みん、な……)
内気で何も出来ない自分を受け入れてくれ、
いつもいつも明るい光で学園生活を彩ってくれた大切な友人達。
その者達と遠く離れ、今自分はこの異郷の地で最後を迎えようとしている。
何も出来ないまま、何も解らないまま。
痛みと恐怖に存在を支配されたまま。
眼前の車はそれ以上逃げようとしない獲物に興が殺がれたのか、
大きく距離を取り排気音を唸らせる。
そして中のドライバーがアクセルを限界まで踏み込み、
少女の躰を原形を留めない程に轢殺する為ギアをMAXに叩き込んだ瞬間。
“さようなら、吉田 一美さん”
予期せぬ声が、少女の裡で響いた。
“君の事は、決して忘れないよ”
大きく見開く、胡桃色の瞳。
この世ならざる場所での光景が、波濤のように脳裡でフラッシュ・バックした。
煌めきを放つアンティーク、すべすべとした双葉の感触、仔猫の鳴き声、
紅茶の味と香り、奇妙な形をした矢、そし、て……
(私、一体、何を考えているの? 何を考えて、いたの?)
恐慌が霧散し、正気に戻った少女の裡で甦る、確かな誓い。
(ここで私が死んだら、諦めたら、一体誰がこの車を止めるの?
他のみんなが、同じ目に遭っても良いっていうの?
怖いから? 痛いから? 苦
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